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「はい。ご実家のお母様が栄養士をされているとかで、そのお母様に教わったバランスの良い食べ方です」
「へえ、それ。私も知りたい。いままでそんな話になったことなかったわね」
准将と青年の会話が弾んで心優にまで振られてきた。
「母ほどではありませんが、母が言っていたこと、守りなさいと言っていた豆知識を教えただけですよ」
「でも。身体を動かす、造らなくてはならない軍人やアスリートにとっては大事なことよね。うちは隼人さんがそういうこと気遣ってくれてきたから……。でも私もこれから一人になった時の食事は考えなくちゃいけないな、なんて思っていたところ」
一人になる。近頃、御園准将がぽつぽつと言うようになった言葉だった。本人は気がついているのか、わかっていて言っているのか心優にはわからない。
夫が自分と離れた生活をする、息子が独り立ちして家を出て行く、いつか。彼女はもうそこが見えてきているようだった。
「今度、母にも聞いてみますね」
「豆知識でも知りたいわ」
「俺も知りたいです!」
ミセス准将との他愛もない会話が成立。なんだこうして話していける。これを積み重ねていけば、きっと光太も大丈夫。と心優も少し安心する。
「それにしても、光太。今日、すごく我慢していたわね。おかしかったわよ。すっごい嬉しそうなのに我慢しているの」
最後に准将があの切羽詰まったブリッジ管制室の空気の中、大好きな海軍パイロット達の本物のコンバットを目の当たりにして興奮を抑えている光太のことを思い出して、やっとクスクスと笑い出す。
「ええっ、笑いそうなお顔ではなかったですよ、准将!」
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