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やっぱり。母子のような微笑ましさだった。これはこれで、光太はまたミセス准将にいい影響を与える気がする。心優もそう思えてきたし、光太もちょっと固さが取れたよう。
そうだよ。いまのところは、かわいい男の子でいればいいんじゃないかな。……心優が言われたマスコットと暫くは言われそうだけれど、光太もそう見せかけて、そうじゃないという護衛官にも育てなくては。心優はまた教育について肝に銘じる。
―◆・◆・◆・◆・◆―
午後の業務が始まって暫く、御園准将が愛用しているパイロット腕時計で時間を確かめる。
光太のデスクは心優と並べられ、いまは空母研修時間以外は、秘書室の簡単な事務作業を教えている。そこにいる心優へと准将が告げる。
「雷神室の雅臣を呼んで」
「かしこまりました」
なんだろう。心優は雅臣がわざわざ単身で准将室へ呼ばれるのはどのような意図があってなのか、そう思いながら内線受話器を手に取る。
雷神室へ連絡すると、事務官の松田大尉がでてくれた。
『いま在席中ですから、すぐに伝えます』
城戸大佐に伝言し、すぐにそちらに向かいますとの返答。
心優はドキドキして、夫になった大佐殿を待った。
その間、御園准将は皮椅子に座ったまま、柔らかな秋風に珊瑚礁の海が見える窓を遠い目で眺めている。その目が最近とっても気になる。
「なんか寂しそうに見えますね……」
光太も気になったのか、心優にだけ聞こえるようにこっそりと呟いた。
やがて、雅臣がやってきてドアがノックされる。いつもどおりに心優がドアを開け迎え入れる。
「お呼びですか、御園准将」
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