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「ねえ、覚えてる?」
四人で円を描くように線香花火をしていると、オレンジ色の優しい光に照らされる。
ボンヤリとその火花の先を見つめていたメイが小さく微笑んだ。
「准ってば、いっつも葉月のこと見てたよね、席離れても」
「え? そうだったの?」
「気付かなかったの、本人ぐらいだよ、准はわかりやすすぎた」
ケラケラ笑うワタルの言葉に、睦希と顔を見合わせて苦笑した。
「なんてツイてなかったんだろうね、准」
「うん……」
灯台のサーチライトが夜の海を照らす。
あの夜もこんなんだったな。
◇◇◇
途中まで睦希と帰っていた准が「あっ」と自転車を止めたそうだ。
先に帰ってて、忘れ物をした、と引き返したらしい。
8月の雨に打たれて。
睦希は、私の頭を撫でた。
「ごめんな、葉月。俺、なんであの時准を一人で行かせちゃったんだろう。ついて行けば良かった、そしたら准は、」
そんなことない、睦希のせいじゃない。
必死に首を振ったら頬を伝う雨と一緒に涙が止まらなくなる。
降りしきる雨の中、傘もささずに私たちは泣いた。
メイもワタルも准を思って泣いた。
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