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「それって、テンションが上がるどころか、ずいぶん悲観的な教えだよね」
花音は呆れた顔をする。
「まぁ、そうですね」と咲は笑った。
「でも、続きがあるんです」
「続き?」
「はい。──『だから、不公平だって嘆くより、自分なりの対処法を見つけろ』って」
「対処法……」
花音はぼんやりと遠くを眺め、それから、「咲ちゃんは見つけたの?」と尋ねた。
「見つけました」
咲は力強くうなずく。
「私の場合は、分析です」
「分析?」
「はい。自分が何を不公平だと感じたのか、何を不満だと思ったのか、とことん考え抜くんです。それで、その正体がわかったら──」
「わかったら?」
花音が興味深げに続きを促した。
「現状と自分の気持ちの折り合いがつくところを探って、妥協点を探すんです」
「妥協点……」
「はい、妥協点です」と咲ははにかんだ。
「私には、不公平を質そうという強い意志はありませんから。自分が折れる形で──でも、できるだけ納得のいく方法を探るんです」
咲ちゃんらしい、と花音は小さく笑った。「ですよね」と咲も笑って応じる。
「──だから、不公平は自分のことをよく見つめ、よく知るためのチャンスだと思うんです。私にとっては、大事なものなんです」
そうに言い切った咲に、花音は眩しそうに目を細めた。
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