26人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
「あ、料理は、僕が持ってきましたよ」と悠太が重箱の包みを掲げる。
「ちなみに、僕のときは、歓迎会はなかったんですけどね」
やんわりと恨みがましいことを曰う。ハハッと咲は頬を引きつらせた。
「お前、今、そういうこと言うか?」
目を細めた凛太郎が、悠太の頭をワシャワシャと掻き回す。
やめてくださいよ、と悠太は凛太郎から距離を取ろうとするが、やはり体格差で押し負け、なすがままだ。
「まあまあ、あの時は忙しかったから」
花音がフォローを入れ、凛太郎の手を悠太から引き剥がした。
「それに、男三人で宴会なんて、むさ苦しいだけですからね」と悠太に向け、遠慮のない言葉を投げた。
「それはそうですけど……」
悠太は唇を尖らせる。
それじゃあ、と咲はパンッと手を打ち鳴らした。
「一緒にやりませんか、歓迎会っ」
咲の提案に、「えっ、いいんですか?」と悠太は嬉しそうに笑う。
「ね、いいですよね、花音さん」
咲は花音を見上げた。花音は、うーん、と首を捻る。
「……そうですね。不公平は事件の元、ですからね」と片目を瞑った。
「ついでに、凛太郎も混ざっとく?」
花音は揶揄うように凛太郎を見て、笑った。
最初のコメントを投稿しよう!