26人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
宴会の後片付けをしていると、スマートフォンの着信音が鳴った。画面に表示された名前は『柏木亮介』となっている。
花音は小さく息を吐き、応答ボタンを押した。
「おお、オレオレ」
それと同時に、遠慮のない声が響く。
「どちら様ですか?」
花音は素っ気なく言葉を返した。
「つれないねぇ」と電話の向こうの声が笑う。
「オレオレなんて、いまどき詐欺でも言いませんよ」
花音は呆れて肩をすくめた。
「──それで、今日はどういったご用件で?」
「ああ、今日は悪かったな、と思って」
亮介が謝罪する。
「文乃とそっちに顔を出すつもりだったが、急な事件が入っちまってな。……今日は家にも帰れない」と嘆く。
「それはご愁傷様です」
花音は冷たく返した。
「それで、文乃から聞いたんだが……」との言葉に、菜摘の一件が頭に浮かぶ。
「お前、彼女出来たんだってな」
しかし、亮介の口から出たのは思いがけない言葉だった。
「彼女?」
花音は眉をひそめた。
「なんだっけ、たしか、咲ちゃん、だったか?」
記憶を探るように、亮介が名前を口にする。
「いえ、彼女は……」
「お前、彼女が出来たんなら、まず俺に報告しろ」
花音が弁明しようとするのを遮り、亮介が続ける。
最初のコメントを投稿しよう!