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告白と回顧
「オベリオ、貴様の、いや貴方の想い、願い、そして私との宿命は確かに受け取った。今こそ真実を話そう。
私は貴方にこの力を託す事ができる。しかしそのことは私達からその力を奪うことになる。」
彼は私の発言の真意がわからず、狼狽を隠せなかった。
「どういうことなんだ?」
私はない目を伏せて答えた。このときばかりはオベリオの目を見ることが出来なかった。
「遥か昔のことだ。神は奢る人類に警告を発した。そのときに私には新しい誓約が加えられた。私の力を人間に託したとき、それを記した文字が世界から消える。だから仮に貴方にその力を託したとしても、その言葉はこの世から消えるため、もう二度とその病に人類が戦う術はなくなる。私は貴方のことを大切に思うが、人類全員の救済には代えられない。すまない。」
私の言葉の真意を理解したオベリオはその場で崩れ落ちた。地面に何度も拳を振り下ろした。
私は叡智の存在、それならこうなることぐらい分かっていたはずなのに。私は無い奥歯を噛み締めた。オベリオは顔をあげないまま責めてきた。
「…それなら、それなのに、なんで俺なんかと話をしたんだ。」
仕方ない、全ては私のせいだ。叡智といえど、人を傷つけてしまうのだから、なにが叡智だと自分を嗤いたくなってしまった。罪を受け入れるべく、心を込めずに答えた。
「戯言や力ずくで私の力を悪用するもの悪用する者は決して少なくなかった。だからそうした輩を粛清するためには判断する時間が必要だった。ただ…」
どうしても声が震えてしまう。
「貴方は今までの人間には無いものを感じたんだ。もっとあなたを知りたいと思ってしまった。私のワガママで貴方の大切な時間を奪ってしまった。そのことは謝っても謝りきれない。済まなかった。」
返事は無かった。代わりにおベリオは踵を返した。
「何処へ行くんだ?」
「決まっているだろ。病を治す方法を探すんだ。」
「無闇に進むのは危険だ。」
「じゃあどこに行けばいいんだ!?教えてくれよ!!」
「…すまなかった…。」
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