告白と回顧

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 二人の間に沈黙が続いた。こんなにも沈黙が息苦しいものとは知らなかった。オベリオは、騙されていたのに先に口を開いてくれた。 「…こっちこそ、ごめんな。」 「ごめんな、なんて。悪いのはこっちなのに。」  オベリオはまたこちらを見てくれた。その目は燃えるように紅く、そしてそれが涙で潤んでいた。彼は手の甲で涙を拭った後、両の掌を私に押し当てて、涙交じりに声を絞り上げた。 「…モノリスよ、どうか導いてくれ…俺を、俺たちを、平穏に生きる道を、教えてくれよ…。」  私は今こそ彼に与えるべき言葉があると理解した。彼を受け止めてできる限り優しく支えるように唱えた。 「オベリオ…今こそ、ともに唱えよう。」  私は視界を遮断した。それでも彼の掌の熱から伝わってきた。今、二人の言葉と鼓動と熱と、そしてマナが一つになろうとしていた。 『ココ アガム トー テン』  マナの反乱が起こった。辺り一帯が森の如く繁茂した。私の過去の記録にも文字たちにも無い反応だった。視界を開く。オベリオも同刻瞼を開いていた。彼の緋色の瞳にマナの炎が揺れ動く。 「モノリス…モノリス!すごい!読める!読めるよ!君の文字が、歴史がすべて読める!これなら大丈夫なんじゃないか!これを読み解いて術を学べば、君から言葉を奪うことなく、覚えられるんじゃないか!」  私もまた胸の高鳴りを隠せなかった。 「そうだ、きっとそうだ。いや、絶対そうだ!オベリオ、貴方なら出来る。貴方も、貴方の里も失うこと無く、幸せになれる。すごい、すごいよ!」  私とオベリオの鼓動はほぼ同じリズムを刻み、マナは胎動のごとく揺れ動き、私の表面を波打っていた。私は皮膚感覚を研ぎ澄まし、彼の掌の熱を感じていた。幸せな時間だった。私自身の力が今、オベリオを突き動かしている。そしてオベリオもまた私を必要としてくれている。永遠に続けばいいと思えた。
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