はじまりのおわり

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 後にはまた乾いた荒野が待ち受けていた。神経針を受けた男はよろめきながら立ち上がろうとしていたが、オベリオは私に寄りかかったまま微動だにしなかった。男が近づこうとしている。しかし男の存在はもう私の視界には入らなかった。オベリオがいない今、私だけの無限の荒野のようだった。  そういえば私は長いこと、一人ぼっちだった。私を慕ってくれた民がいなくなってから、帝国の連中は私の聖域に無遠慮に踏み込んできた。だから殺してきた。その頃から、私は人を拒むようになっていた。結局のところ、人類は所詮愚かで利己的でつまらない生き物であった。誰も来ないと思い、私は眠りについていた。  そんな私の眠りを終わらせたのは、山奥の田舎から出てきた無知な若人だった。お陰でさんざん振り回された。こんなにマナを無駄遣いして、叡智が無駄遣いされて、何より感情が濁流のように荒れ狂わされてしまった。まったく久しぶりに静寂に包まれた気がする。やっと静かに眠れる。やっと…。  いや、またひとりになってしまったのか。  無限とも思える孤独を終わらせたあの若者はもういない。  あの美しき魂にはもう会えない。 会いたい。 もう一度会いたい。 オベリオに会いたい。  私の心は、言葉は、変わらなかった。魂を探し求めていた。  今一番ふさわしい呪文はなんであるか、考えるまでもなく、言葉が浮かび上がった。  足元から新緑が湧き上がってきた。オベリオと反応したときのように生命の律動が始まった。マナが膨らみ、私の身体とオベリオの遺骸とが宙に浮かび上がった。暗殺者はそれをただ眺めているしかなかった。  私は叫んだ。 「オベリオよ…エル・マーレ!!」  刹那、私は光球となり、オベリオの肉体は光の中へ溶け込み、そして数多の光の礫となって光の雨となり飛び散った。
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