はじまりのおわり

5/8
前へ
/36ページ
次へ
 その日、私は見た。  わが帝国の長年手中に収めることを悲願としたモノリスが、幾千の欠片となって世界中に飛び散った。その一つは私の掌にも深々と刺さった。その一つは私の右眼に突き刺さり、その一つは私の心臓を串刺しにした。あまりの激痛に、拷問対策の訓練を受けていた私ですら苦悶の声を上げざるを得なかった。それなのに、死んでなけれぱ、血も流れていなかった。黒曜石たちはまるで昔からそこに居座っていたかのようにふてぶてしいほど黒光りし、時折緋色の光を稲妻のように帯びた。視界は、眼球を潰されたにも関わらず、曇るどころか高精細に世界を描き出した。  その視界が一つの大きな光を捉えた。すべてが三千世界に消えたと思った光球だが、もっとも大きく眩しい双球が絡み合いながら天高く舞い上がり、そして迷うことなく目指す先に駆け抜けていった。それに呼応するように私の視界は雲をかき分け雲を掻き分けて音をも置き去って進み続けた。私の肉体は微塵も動いていないのに!視界を支配されたままに私が辿り着いたのは見覚えのある、山間の寒村だった。一人の少女が頼りない足取りで家から出てきた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加