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兄の声がした気がして、私はオバァの止める声も気にせず、外に出た。外に出た途端、また肺が押し潰されたように苦しく、私は咳が止まらなくなった。兄はいなかった。しかしまだ声が聞こえた。憶測ではなく、確信した。兄がいる。
私は力を振り絞り、空を見上げた。2つの光が私達の村の頭上に浮かんでいた。その光たちは混ざり合い、一つになり、光の波が降り注いだ。
私は光を浴びた。胸が広がるような感覚を覚えた。咳が止まり、久しぶりに私は大きく深呼吸をした。村の藁の屋根と漆喰の混ざった匂い、羊の群れ、麦の香、もう十数年当たり前と思っていたこの風景を鮮明に見せてくれた。長老から諦めろと言われていた生命が生きたいと強く願っていることを感じた。瞳に熱を感じた。
「オベリオ、やってくれたんじゃな…」
扉を開けたオバァは光の波を見ながら拝んでいた。家々から人々が出てきて、歓喜の涙に包まれた。
「兄さん…」
私もまた涙を流していた。そして私は膨らんできたお腹をさすり、勇者の存在を未来の希望へと伝えた。
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