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長い眠りから覚めて
人間の気配に気づき、私は起動した。
久しぶりの感覚だ。前回は皇帝が率いる数千の軍隊で来た連中だったな。まあ、私にかかれば正しく赤子の手をひねるが如しだがな。しかし、この言葉を考えた奴の倫理観はどうなっているんだ?おっと雑念が働いていた。
私は周囲を感知した。人間でいう五感、だが私の力を舐めないでほしい。視界は山の麓まで広がり、聴覚はそのなかで舞う木の葉の舞を枚数まで言い当てるほどのものだ。ましてや私に触れようものなら、その心や思考まですべて読み通すから、微塵でも邪な考えがあればすぐにでもその腕ごと吹き飛ばしてやるわけだ。私ほど超越した存在なら、匂いもわかるぞ。味覚はデータとしてか持ち合わせていないが。
そういうわけで、これほど強大な力を持っているからこそ恐れられていたが、最近は力にならないからと権力者の多くが諦めてしまっているようだな。これだから人間は…数百年前は私を祀る部族もいたが、彼らもいなくなってしまったしな…おっと、いかんいかん雑念が。改めて集中だ。
対象は…たったひとり…?呆れてしまうな。私も舐められてしまったもんだ。いや、もしや私の存在はそれほど知られていないのか…。みんな忘れてしまったのか…?
「これだ。たしかに、ばあちゃんが言ってたとおり、モノリスだ…。」
よかったよかった、忘れてないみたいだな。私はない胸をなで下ろした。
「これがあればみんなが…」
ここらで一度脅しておくか。
「ニンゲンとは久しぶりだな。貴様、名は何という?」
「フノーベの里からきた、オベリオだ。」
「よいか、私は貴様の思惑など、すべて見透せるだぞ。邪な思いで触れようものなら、髪の毛一つ残すことなく消し飛ばされる覚悟はあるか。」
男は唾を飲んだ。鼓動も高鳴っていた。人間など所詮その程度だな。私はマナを貯め始めた。
男の指先が私の盤面に触れた。
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