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その日
男が起きたのは結局翌日になってからだった。朝日の光を浴びて、それに合わせて目覚めた。しかし長い冒険生活の影響だろうか、眠りは決して深くはなく、僅かな音にも反応するため、私まで緊張してしまった。おかげでこちらは寝不足だ。いくら長いこと寝ていたとはいえ、突然徹夜をさせられたら全知全能といえど疲れてしまう。文句の一つでも言いたくなったが、男は寝ぼけることなく、目覚めると再び顔つきが引き締まった。自然とこちらまで集中できるようになった。そうそう、モノリスとの対峙とはこうでないとね。
「…おはよう、冒険者よ。改めて、もう一度名を名乗れ。そして貴様の目的を答えよ。」
私は一度落ち着くために、する必要もない咳払いをして、そして毅然した態度で再び問い直した。
「フノーベの里からきた、オベリオだ。モノリスよ、あなたは過去に幾度も災害や疫病、そして果てぬ戦乱の世を鎮めてきたと聞いた。どうかその力を私に授けてくれないか。」
「オベリオよ、それは幾分虫のいい話ではないか。長旅は大儀であったが、そちらは何の見返りもなく、私の力をいただくというのでは、釣り合わないだろう?」
オベリオは表情一つ崩さず言葉をつづけた。
「この命を差し出せる。それで事足りないだろうか。」
「お前はここで死んだとしてもよいのか。」
「それで、里が、妹を救えるのなら俺は本望だ。」
「…詳しく話しなさい。」
彼は、一息ついてから話し始めた。
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