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…?
「…クイズ?」
オベリオは明らかに困惑していた。首が真っ直ぐに向いていない。そうだ、そうでなくては困る。力を悪用されないようにするためにも、真に必要とされる人だと判断するためにも、条件は厳しくなくてはならない。しかし、このクイズ大会ももうこれだけ数えることとなったか。
「第一問、私は神からある使命を授かり、こうして現世にいるわけですが、それはなんでしょうか。ア:人類を導くため、イ:人類に叡智を与えるため、ウ:人類を滅ぼすため(最後はニヤリと言うのがポイントね)」
戸惑っていたオベリオだが、迷いのない声で応えた。
「これは簡単だ。人類に知恵を授けるも道は自分たちで踏みしめよ、だから答えはイ!」
「……」
オベリオは不安からか、私に手をついてきた。その掌から暖かい光と(無駄にためるなあ…)というボヤキを授かった。こうこう、こうでなくちゃ。
「…正解!!」
オベリオは明らかに胸を撫で下ろしていた。簡単だって言ってたのに、そうやって分かりやすく気持ちを出すので、見ていて気持ちがいい。
「では、次の問題だ。」
私はそうして暫く問題を出しつづけた。しかし普段なら間違えるか、諦めるであろう頃合いになっても、オベリオは間違えなかった。
「エだ!」
「うーん…ドノヴァンキャルベン、じゃないかな。」
「それは簡単だ。チャルチコトリエの実を発酵させて作る酒が必要になる、そうだろ?」
「これもやっぱり…アだ。」
私は彼が正解するたびに二つの感情が再び渦巻いていた。ひとつは、もう流石に理解した。恋心だ。こんなに私のことを分かってくれているの…、そうして胸がときめいている。もっと私のことを知ってほしいし、私のことを考えてほしい。これまで数多の民の為に働いてきた私は今、正直に私利私欲のために叡智を使い倒していた。私だけをもっと見て欲しい。こんな重たい石、オベリオだって見限りそうなものだが、彼はそれでも応えてくれた。すると私は嬉しくてそれなのにもっと甘えたくて、立場を利用して次の問を出してしまう。叡智だから問題なぞ欠伸しながらでも安々と生み出せた。むしろ承認欲求といえばよいのか、始めての感情が昂り、一問解かれるごとに三問湧く勢いで生まれた。これが恋心なんだ…!!
しかし、私はもう一つの感情、焦りと罪悪感とに苛まれていたのも事実だ。言わなくちゃ、ちゃんと伝えなくちゃ、その焦りから自分の視野は狭くなっていた。
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