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修羅場?
「どうもすみません、遅くなりました…って、あ、なーんだ、そっか、買い物に来るって言ってたもんな」
店長の亮一がやってきた。
「もしかして?店長の奥様ですか?」
チーフが私達を見た、どちらが?という目で。
「ご挨拶が遅れました、妻の聡美です。いつも主人がお世話になっております」
そう言って挨拶をしたのは聡美。
「えっ!えっ!ちょっと…」
「すみませんね、なかなかご挨拶に来れなくて。えっと、チーフさん?ですよね、大変なお仕事なんでしょ?」
わけがわからずあたふたする夫をほっといて、どんどん話を続ける聡美。
どういうこと?と私に目で訴える夫。
私は、口元に人差し指を立て、しっ!と黙らせる。
「お世話になってるのは私の方なんですよ。店長は優しいし、ごちゃごちゃとうるさく言わない人なのでやりやすくて助かってます」
「そうなんですか?それはそれは。あなたが店員さんから嫌われてなくてよかったわ」
「あは、は、まぁね」
なんだかトンチンカンなやりとりをしていたら、離れた所で大きな声を出している男性が見えた。
「お客様、お静かにお願いします、他のお客様もいらっしゃいますし」
「うるせぇー、さっさと店長出せ!どこにいるんだ?!店長出てこい!」
「いま、呼んできますから」
「おい!青木佳苗も呼んでこい!」
「青木さんですか?」
「そうだ、俺は佳苗の旦那だ、佳苗!どこだ!」
30代くらいの、チンピラのような男が大声で怒鳴り散らしながらこっちへやってくる。
青木佳苗の旦那さんだと言っている。
聡美と目で合図、まさかの旦那さん登場。
「ちょっと行ってくる」
そう言うと、夫は怒鳴り散らす男の方へ歩いていった。
「あ、店長!こちらのお客様が!」
「お前か、ここの店長は!」
「店長の坂下です、どうかされましたか?」
「どうもこーもねぇわ、俺の嫁に手ぇ出しただろうが!」
「何かの誤解かと思いますので、どうかこちらへ、他のお客様もいらっしゃいますので」
穏やかな口調で夫が近づいていく。
「チーフ、警察を呼ぶ準備しておいて。合図したら110番してね」
そう告げた聡美は、カートを押しながら店長の方へ歩いていった。
私もついていく。
向こうから、さっき逃げるように駆け出して行った青木佳苗が近づいてくるのが見えた。
「はぁ?人の嫁に手を出しておいてなに、しゃーしゃーとぬかしてるんだ?お前は!」
そこへ佳苗がやってきた。
「正和さん、やめてください」
正和というのが旦那さんの名前のようだ。
佳苗は、夫の襟首をつかんで、今にも殴りかかろうとしている正和の腕を押さえようとしていた。
「はなせ!佳苗!お前もこいつに言いたいことがあるだろ!あ?!」
「お願い、ここじゃ…」
「お客様、こちらへどうか…」
ザワザワとお客さんが集まってきて、人だかりができている。
「うるせーっつってるだろ!」
ひときわ大きな罵声のあと、ガシャーンと陳列棚から商品が落ちる音がした。
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