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私の汚れた両手を、彼の手がそっと包み込んでくれた。私を覗き込むように見つめてくる彼が、
「桜、やり直してくれないか。死ぬまで桜と居たいんだ。桜を愛してる。」
彼は不安そうに言った。私は涙でぐちゃぐちゃになりながら、笑ってしまった。
やはり、彼が大好きだ。いや、どうしようもなく愛してる。
「その台詞は、プロポーズにも聞こえるよ。」
「えっ!?」
「死ぬまで私と居たいなんて…。
わかってるよ。やり直したくて、言った言葉だよね?」
「うん。お互いこんな汚れた姿で、プロポーズはしない。婚約指輪だってまだ、出来てないし…。
あっ!!」
「はぁ!?」
貴志は真っ青になって、慌てふためいてる。
私は溜息を吐きながら、彼に抱きついた。
「婚約指輪は、聞かなかった事にするよ。
やり直してあげる。ただし、合コンには行かないでね。」
「ありがとう。それと本当にごめん。
もう飲み会に行かない。給料分じゃないから。」
(別に飲み会には、行けばいいのに。合コンじゃなければ、怒ったりしないよ。)
彼の言葉に思わず、吹き出しそうになった。貴志の真っ直ぐ見つめてくる様子に、私の中にあるわだかまりが無くなっていく。
「真っ黒になっちゃったね。帰ってお風呂に入ろうよ。」
「一緒に?」
「もう!反省してる?」
2人で笑いながら、手を繋いでゆっくり歩く。
近い将来、貰えるであろう婚約指輪を想像しながら。
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