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私の肩に手を乗せ心配する友人は、
「会社の飲み会で、盛り上がったのかもよ!?」
「そんな事ある?」
「ごめん。会社の飲み会で、席替えタイムなんてしたくないです。むしろ、会社の飲み会なんて早く帰りたい。」
彼の楽しそうな様子に、抑えてた怒りが再び襲ってきた。私は友人の止める手を押し退けて、彼氏の前まで歩こうとした時に、彼氏と目が合った。貴志は驚いた顔して、私を見た。
「桜…。あ、あのさ。これは…。」
「楽しそうで何よりだね。気にしないでいいよ。」
「いや、あのさ。」
「こんなに陽気な貴志は、見た事ないや。」
「ご、ごめん。聞いて…。」
「嫌、今は聞きたくない。」
そう言って踵を返すと、背後で貴志の私を呼び止める声が聞こえる。私は友人に帰る旨を伝え謝罪した。勢いよく居酒屋の扉を閉めて、涙を堪えて急ぎ足で自宅を目指した。コンクリートに打ちつけるハイヒールの音が、私の怒りをあらわしているようだった。
愛されている、そう思ってた。
出世欲に欠けていて、穏やかに生きていればそれでいいと思っているような、そんな彼を愛しく思ってきた。まさか、合コンに参加するような裏の顔があるとは思わなかった。
「合コンに参加したいくらい女に飢えてるなら、私からあんな奴捨ててやる。」
自宅近くの河川敷を目指すうちに、自然と涙が溢れ出してきた。
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