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翌日は土曜日なので、自宅の掃除をして過ごした。考えたく無いのであれば、掃除をして綺麗さっぱりしよう。部屋も男も…。
一心不乱に雑巾片手に、部屋を掃除した。
首に掛けたタオルで額の汗を拭うと、携帯電話が鳴ってるのに気が付いた。
貴志の名前が、携帯電話に表示されている。
電話で話したく無いが、関係を白紙にしたいと言わなければならない。気怠さを感じつつ、電話に出た。
「何?」
電話の向こうからは、貴志が息を飲み緊張するのが分かった。
「昨日はごめん。合コンなんて、行くつもりはなかったんだ。」
「言い訳なんて聞きたくない。」
「ごめん。聞いてくれないか。」
「別れてよ。」
「え…。何で?」
「私、貴志は穏やかで静かな人なんだって思ってた。貴志が大好きで、結婚したいって思ってた。
なのに昨日見た貴志は、私の知らない人だった。合コンも慣れてるように見えたし」
「考え直してくれないか。聞いてほしいんだ!」
「何にも聞きたくない。
今までありがとう。貰った指輪だけど、見たくもないから捨てた。」
「指輪…、捨てたのか?」
彼はショックを隠せない様子で、聞いてきた。嫌われてしまえばいい。結婚まで考えてたのは、私だけだったのだから。そんな事を思いながら、涙声になるのを堪えて言った。
「河川敷に捨てた。じゃあ、さよなら。」
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