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見つけにくい物ですか?
夕方の河川敷は、空が赤く染まって綺麗だった。河川敷の覆い茂る草むらを前に、怯みそうになる。
もう見つからないかもしれない。
「この辺に投げ捨てた気がする。」
決意をして、草むらに分け入った。見つからないかもしれない。でも、やってみなければ分からない。
日も傾き、周囲が暗い事にやっと気づいた。私はおもむろに立ち上がって腰を叩いた。自ら手放した物は、容易には戻らない。でも、あともう少しだけ探そうと腰を屈めると、いきなり明るく照らされた。
「何やってるんだよ。」
貴志が携帯のライトで、私を照らしていた。
彼の目が大きく見開いていた。
「貴志…。ライト眩しいよ。」
「あぁ、悪い。探し物か?」
「違う。」
「指輪、探してるんだろ。違うのか?」
言い当てられて、目を逸らした。辺りが暗くなっても必死に探す、惨めな自分を見られた恥ずかしさで。私は目を逸らしたまま、
「指輪に罪はないし、気に入ってたから。」
「そうか。」
彼は静かに呟くと、ライトを周囲に照らして探し始めた。闇雲に探す私と違って、軍手をし携帯電話のライトを使って探す彼の後ろ姿。
もしかしたら、ずっと探してくれてたのかもしれない。貴志は探しながら、私にあの日の事を話してくれた。
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