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独り言だと思って聞いてくれないかと、彼は前置きをした。
あの日、取引先から合コンをしないかと誘われた。取引先という事もあり、無碍にも出来ず引き受けてしまったと。
私が帰った後、友人が
『彼女がいるのに、合コンするなんて誠意がなさすぎる!』
と彼に詰めよったそう。その様子を見ていた取引先が、彼に謝罪をされた。この事で取引を止めるような事はしないと、何度も頭を下げてきた。後日、取引先が上司を伴って菓子折持参で、再度謝罪されたと。
貴志は屈みながら疲れた様子で、溜息混じりに話してくれた。
納得できない私は、
「いつもの貴志じゃなかった。あんな貴志、見た事が無い。」
「だって、いくらなんでも取引先に嫌々参加してますとは、いかないよ。それに…。」
「それに?」
「桜との結婚を考えたら、今までのように仕事をしてたら、良くないと思ったんだ。だから、必死だったんだよ。」
「だからって、合コンは無いよ。」
「うん、悪かった。
将来、桜を養っていくには、こんな事もしないといけないって思ってた。今まで出世なんてしなくてもいいと思って、取引先との飲み会なんてしたくもないから"今度しましょう"って言って逃げてた。飲み会は、給料分の働きには入らないし。」
「取引先との飲み会は、給料分の働きには含まれないの?」
「うん。」
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