最終章 戦いの時

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最終章 戦いの時

 バイクを走らせ晴海埠頭に到着したのは、午後10時30分頃だった。  深夜の晴海埠頭は、静かだった。 湾岸には、いくつかの旅客船が停泊している。 人気の無い埠頭道路をゆっくり走らせていると前方に黒い車を発見した。 車の外に見覚えのある黒服の男たちが5人ほど立っている。 少し手前にバイクを止めヘルメットを取り車へ向かう。 車からキムレジンが下りてきた。 「良く来たな、立花春菜。いや、留美子かな?」 「純平を返せ!」 「純平は、船の中だ。薬で眠らせている。お前も純平も2人とも売り先が決まっているのさ」 近くに古びた小型の客船が停泊していた。 「騙したのね! お前、最初から返すつもりが無かったのね!」 キムが笑う。 「お前は、大事な商品だ。お前の体細胞から無数のクローンを作る。お前の体で世界中で病気になっている人を救えるんだ。すばらしい事だろ。痛い目には、会わせない。だから一緒に来るんだ」 「はあ、そうですか・・・て言うと思ったか! ふざけるな! 私の体をバラバラにして売りさばくだけだろ。世界中の罪の無い人をさらって生きたまま臓器を売買するなんて鬼畜のすることだ。絶対ゆるさない! 覚悟しろ」 アドレナリンが爆上がり。 テンションマックス。 「捕まえろ! 商品に傷をつけないようにな!」と、キムが命令する。 男たちが一斉に襲い掛かってくる。 いくらなんでも一度に相手にできない。 全速力で逃げる。 少しでも男たちを引き離す。 バラバラに追いかけてくる男たち。 振り返り全力で男たちに向かう。 「テイヤー!」 掛け声と共に飛び蹴りをかます。 次々に襲い来る男たちを回し蹴りやパンチでなぎ倒す。 たちまち男たちは、唸り声を上げて倒れる。 キムが驚く。 「おやーいつの間にそんなに強くなったの?」 「ふん、お前らが弱すぎるんだよ!」 と、その時、2台の覆面パトカーがサイレンを鳴らしながらやってきた。 パトカーを見るキム。 「おやー? パトカーが来ちゃったね。しかたがない。飛び道具をつかうかね」 「飛び道具って?」 その時は、何を言っているのか解らなかった。 すると停泊していた船の甲板からランチャーロケットを構える男たちのすがたが見える。 パトカーから警官が下りてくる。 「やれ!」キムの掛け声。 船上のランチャーから”バッシュー”と発射音。 逃げる警察官。 ロケット弾がパトカーに命中して爆発する。 爆音と炎が上がり衝撃で飛ばされる警察官。 驚いた。 銃を持っているのは、想像していたがまさかロケットランチャーって・・・。 まるで『ダイハード』か! ハリウッド映画じゃあるまいし。 ここは、日本だよ。 「バカめ!」  と、言って腰の銃を私に向けるキム。 「お前をバラバラにしたくない。おとなしくついてこい」 「くそったれ! お前なんかボコボコにしてやる」 と、飛びかかろうとした時”パンパン”と銃声が響く。 胸に石をぶつけられたような衝撃が走る。 見るとスーツに弾が食い込んでいる。 「痛い!」 貫通は、しないけど思いのほか当たった所が痛い。 銃弾がポロポロと下に落ちる。 キムが驚いて見ている。 「なんだ! 防弾服か? それ」 あっけに取られているキムに飛び蹴りをくらわす。 倒れるキム。 すぐに立ち上がったキムと乱闘が始まる。 船上では、ロケットランチャーの2発目を用意している男たち。 そこに向かって警察官が銃を撃っている。 銃撃戦だ。 さながら戦場のような激しい戦いが始まった。 なかなか倒れないキム。 キムが懐からサバイバルナイフを取り出す。 「これでお前の首を切り取ってやる!」 ナイフを振りかざし切りつけてくる。 ナイフなんて想定していなかった。 腕をクロスして防御するが鋭いナイフが私のスーツを切り裂く。 切れたスーツから血がにじむ。 「えー、銃弾を通さないのに刃物で切れちゃうの?」 意外だった。 「はは、こんな事だと思ったよ。これでお前も終わりだな」 キムが不敵な笑いでかかってくる。 防戦するのがやっとだった。 何度も顔をかすめるナイフで悲惨な顔になっている。 顔を庇っていると腹にナイフを突き刺してくるキム。 とうとう、腹のあたりのスーツが切れる。 倒れた私に馬乗りになるキム。 倒れた私の裂けたスーツの隙間にナイフをグリグリ刺してくるキム。 「うわーやめてくれ! 死んじゃう!」 「あれー、お前は、不死身なんじゃないの?」 もうだめだ。 と、諦めかけた時だった。 ”パッキーン”と鈍い金属音。 倒れるキム。 見ると直人が鉄パイプを持って立っている。 「直人!」 「大丈夫か、春菜」 「助けに来てくれたのね」 直人が、倒れた私の手を引き立たせてくれた。 と、その時、後ろからキムが直人を刺した。 倒れる直人。 「直人!」と叫ぶ私。 メラメラと怒りが込み上げる。 「もう、許さん!」 頭から血を流しフラフラしているキムに思いっきり回し蹴りする。 後頭部を直撃するキックに首の骨が折れる音。 倒れるキム。 船の中から警察官に肩を支えられ純平が出てきた。 到着する救急車と多くのパトカーで辺りは、騒然としていた。    ー終わりー
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