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へんな転校生
純平の事故から1月ほど過ぎた日だった。
いつものように学校へ登校すると彩芽が話しかけてきた。
「ねえ、気が付いた? ほら窓際の席。一つ増えてない」
「ああ、本当ね。気が付かんかったわ」
「転校生が来るって噂よ」
「そうなの」
「どんな子かね、気にならない?」
「はあ、別に・・・」
「つまんねー奴」
彩芽は、少しがっかりしたように席に帰って行く。
授業のチャイムが鳴り生徒が席に就いていると担任が入ってきた。
「えー、今日、このクラスに転校生が入って来ました。木更津君入って」
一瞬騒めく教室。
教室前のドアから入ってくる男子。
静まった生徒達の視線が集まる。
教室前方でこちらを向いて立つ。
無表情だがキリッとした顔立ちでクールな雰囲気が漂っている。
「木更津君は、お父さんの都合でこの学校へ転校してきました。では、木更津君自己紹介して」
「・・・」
少し変な間が開いて話始める。
「木更津直人だ」
たった一言で終わり。
へ? それだけかい?
自己紹介なってないし。
ざわつく教室。
「あー、緊張しちゃったかな。木更津君は、少しシャイなようだね。まあ、きっとすぐ慣れます。皆さん仲良くしてやってください」
少し先生の方が焦っているように見えた。
木更津直人君は、しれっと外を見ている。
第一印象は、変なやつ。
こうして授業が始まり休み時間になると彩芽が話しかけてきた。
「ねえ、春菜。木更津君て、かっこよくない?」
「そうかな? ちょっと変人に見えるけど」
木更津君は、無表情で外を見ている。
「あれがいいんじゃない。クールで。私、ああいう男子好きだな」
「はあ、ご自由に」
すると、木更津君がこっちを見る。
「キャー、こっち見てる」
彩芽が喜んでる。
何だか眼光鋭いって言うか視線が刺さるように私を見ている。
「何あいつ。私の事睨んでるし」
目をそらす私。
「気のせいじゃない」と彩芽は、ニコニコしている。
すると木更津君が、つかつかと私たちの所へ来る。
私の前に立って話しかけてくる。
少し驚いた。
「おい、お前。立花春菜ってお前か?」
はあ? 何だこいつ。
ちょっとカチンときてしまった。
「あのー、いきなりお前って。私、どこかでお会いしました?」
憮然とする私。
「立花春菜だよな。ニュースで見たぜお前の事」
「ああ、そお言う訳ね。だからどうしたの」
「お前、どこに住んでいる」
やっぱおかしな奴だ。
「あなた、少しおかしんじゃない? いきなりどこ住んでるとか、普通聞かないでしょ。初めて会った人に」
横で聞いている彩芽が口をはさむ。
「まあまあ、落ち着いて。直人君ってお友達っているの?」
その目がキラキラしている。
「・・・いない」
「ねえ、直人君どこから転校してきたの?」と彩芽が聞く。
「・・・じゃあ、またあとで」と、どこかへ行ってしまう木更津君。
開いた口が塞がらない。
「何? あいつ。やな奴」
私も、いいかげん口が悪い方だと思っていたが上には、上がいる。
「やっぱクールだわ。私、直人君みたいな人、憧れちゃう」と彩芽。
「彩芽も、そうとうキワモノ好きね」
「だってカッコいいじゃん。ねえ、春菜、私にちょうだい」
「はあ? ちょうだいって、別に私のもんじゃないし。勝手にすれば」
こうして放課後いつものように校門を出て純平と並んで歩いていた。
「ねえ、どうしたの? あの転校生ともめてたみたいだけど・・・何て言たっけ彼」
「ああ、木更津直人。やな奴よ」
「そうとう嫌いみたいだね。春菜」
「だって、すごい上から目線で、変よ。いきなり『どこ住んでる』なんて普通聞く?」
「好きなんじゃない、彼」
「そりゃないでしょ。初対面だし。ニュースで見たってだけでしょ」
「わからないよ、一目ぼれとか」と笑う純平。
すると背後から声がする。
「一目ぼれじゃねーし」
振り向くと木更津直人が直後にいる。
「わぁ!」
純平と私は、驚いて足を止める。
「いつから居たの!」
「俺も一緒に帰る」と直人が言う。
「はあ?」
私と純平が目を合わせる。
「ちょっと、やめてよ。私の後ついてくるの」
「どうして?」
「どうしてって・・・ 友達でも何でもない人が付いてくるなんて、そう言うのストーカーて言うのよ」
「ストーカー? じゃあ、今日から友達になってやる」
「はあ? やっぱ、いかれてる」
呆れて見ている純平。
「純平、こんな奴ほっといて行こう」
と、速足で歩き始める。
「ちょっと待ってよ・・・」
純平は、あまりに速足の私に置いて行かれそうになる。
それをぼうぜんと眺めている木更津直人。
しばらく歩き後ろを振り返ると直人の姿は、見えなくなっていた。
「ふう、やっと諦めたか」
「ほれられちゃったね春菜」
「やめてよ、あんな奴」
「ねえ、バイクがさ、修理終わって帰ってきたんだ」
「良かったわね。またバイク通学するの?」
「それがさ、学校の許可が取り消されてさ、危ないからバイク通学禁止だって。ひどいよな、もらい事故だってのに」
「ひどいわね、純平のせいじゃないのに」
「ああ、でさぁ今度の休み仲間とツーリング行くんだけど一緒にどう?」
「うん、いいわよ。暇だし」
「やったー!」
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