奇跡の生還

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奇跡の生還

 私、立花春菜と竜崎純平が交際を始めたのは、衝撃的な出会いだった。  この春、高校2年生になったばかりの私と菊池彩芽が登校時の事だった。 赤信号で並んで立っていた時、正面に右折待ちのバイクが止まる。 「ねえ、あいつ。竜崎純平じゃない?」とバイクを指さす彩芽。 「ああ、純平だね。バイク通学って許可取ってるのかね」 「今年から通学許可が許されたんだよね」 純平とは、同じクラスなのだが一度も話した事が無い。 その時、ガガガと鈍いブレーキ音が響き続いて”ドーン”という音と共にバイクが車に追突され、衝撃で純平が交差点に放り出される。  驚いた。 とにかく驚き立ちすくむ私。 すると交差点に直進して突っ込んでくるトラックが見えた。 道路に横たわる純平。 トラックの急ブレーキ。 彩芽は、目をつぶって手で顔を覆っている。 とっさに私は、交差点に飛び込み純平を引っ張った。 当然、間に合うはずもなく私は、意識を失った。  次に目が覚めたのは、病院のベットの上だった。 頭は、包帯がグルグル巻きにされ腕には、点滴が繋がれている。 枕もとで母が心配そうに見守ってる。 「ああ、おかあさん・・・」 「春菜、だいじょうぶなの」 心配そうに私の手を握ってくる。 「少し頭が痛いけど大丈夫よ。それより竜崎君は?」 「大丈夫よ。どこも怪我してないって。春菜のおかげだって感謝してたわよ」 「ああ、良かった」 「良かったけど、どうしてこんな無茶したの。貴方が轢かれてトラックの下敷きになったのよ。生きているのが奇跡だって先生が言ってたわよ」 起きようとするが全身が痛い。 「痛たたた・・・」 「無理しちゃだめよ、じっとしてなさい」 「でも、学校行かなくっちゃ」 「何言ってんの。あんたさっきまでトラックの下敷きになってたのよ」 「はあ、でも・・・何とも無いもの」 ベットで上半身を起こしミカンを食べていると医師が診察にやってきた。 「あれ? 君、今日、緊急搬送されてきた立花春菜さんだよね」 「はあ、そうですけど」 驚いた顔で私を見て、手にしたカルテをペラペラめくっている医師。 「んー何だ? カルテ間違ってるのか? 全身打撲で3か所骨折って」 「えっ? 私全身打撲なんですか? さっきトイレ行ってきたけど何とも無かったし」 「君ってトラックの下敷きになったんだよね」 「はあ、そうみたいですね。知らんけど・・・」 「ちょっと診察しよう。横になって」 横になった私をあちこち触る医師。 「どこも痛くない?」 「ぜんぜん」 「・・・なぜなんだ?」と首をかしげる医師。 「先生、学校行きたいんですけど」 「そうね、でも何かあるといけないから明日まで様子見て何とも無かったら退院しましょ」 何だろう? 本人が何とも無いっていってるのに入院かよ。 退屈だ。 頭の包帯も取れ夕方ベッドでうとうとしていると病室に竜崎純平がやってきた。 果物の入ったバスケットを持っている。 「春菜さん。体、大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫よ。なんともないし。明日退院」 一気に笑顔になる純平。 果物バスケットを差し出し「これお見舞い」 「ありがとう。そこ置いといて」 ベット脇の丸椅子に座る純平。 「ああ、よかった。重症だって聞いてたから」 「私、頭弱いけど体は、頑丈だからね」 「えー、そうなの? 頭も頑丈そうだけど」純平が笑いながら言う。 「あーそっちの弱いじゃなくって・・・」 「わかってるって、勉強できないの知ってるし」笑。 「おめー、私をバカにしに来たの?」怒る。 「ジョークだって。怒るなよ」 純平が真剣な顔でかしこまる。 「お前に感謝してる。助けてくれてありがとう。春菜は、命の恩人だ」 病室に彩芽が入ってくる。 私を見るなり泣いている。 「春菜、大丈夫なの。死んじゃうんじゃないかって心配してたのよ」 ぽろぽろ泣いている彩芽。 「ごめんね、心配かけて。でも何ともないから」 笑顔の私を見て大声で泣く彩芽。 「よかったー、何ともなくてよかったー」 「大丈夫よ。私、殺しても死なないから」 自分で首を絞めるまねをする。 「ははは、すげーや不死身じゃん」と笑う純平。 「おめーが笑うな!」 「ごめん」 こうして衝撃的な1日が終わった。  その頃、事故の様子をあるドライブレコーダーが捕らえていた。 そのドライブレコーダーの映像がニュースに流れていた。 そして、その映像が大事件に発展する事になるとは、知る由も無かった。
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