第一章 片想い

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それからというもの、俺と奏多には前と同じような日常が戻ってきた。 朝は一緒に登校、学校に行ってからは、程々に話すぐらい、放課後は部活がない日だけ一緒に帰り、たまに晩飯を食べて帰るといった俺が求めていた当たり前が戻ったのだ。 ……たったそれだけで、嬉しかった。どうしようもないぐらいに、毎日が楽しかった。あんなに色のない世界だったこの前までが、まるで嘘のように感じるぐらいだった。 けれども、それと同時に不安もあった。 ……これから先、また奏多に彼女が出来たら。誰かに告白されて、付き合って…また今までの日常が消え去ってしまったら。 奏多に、好きな人が出来てしまったら…俺はどうすればいいんだろう。 そんな不安が付き纏い、中3の進路希望は奏多とは同じ高校にしなかった。…と言うか、奏多にはスポーツ推薦枠の高校がいくつか来ていたため、てっきりそっちに行くものだと思っていた。 『隼人は進路どうするの?前と変わらず?』 『…いや、変えた。先生に、お前ならもう一個ぐらい上の高校行けるだろって言われて。』 『え、そうなの?…じゃあ、中央?』 『うん、そう。ごめんな、前一緒に東行くって言ってたのに。』 東高校はバスケの強豪校で、俺は奏多と一緒の高校に行こうと思ってたので、漠然とそこにしていた。
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