第一章 片想い

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直接告白なんか、緊張しすぎて何を言ったらいいか分からなくなる。 それこそ、上手く自分の言葉が伝えられずに想いすら届かないなんて事もありそうだ。 ……それでも、こうやって手紙にして想いを伝えようと思うだけでも勇気があるなと感心した。…それに比べて俺ときたら、いつまでも臆病だ。 教室へ戻る途中で、明らかに空き教室だと分かる所から男女2人がヌッと出てきた。 2人とも制服が乱れていて、男の方は俺と同じ学年の有名人。奏多と同じくらいにモテる奴だ。名前は……確か宮野。いつも違う彼女を連れていて、所謂遊び人である。女の人は…如何にも先輩という感じで、妙に色気があった。 そんな2人を見ないように視線を晒し、通り過ぎようとした際にガシッと腕を掴まれ、ギョッとして振り返ると宮野が口に人差し指を当て、シーッという手振りをしていた。 …そんな普通の仕草でも顔が整っているという事が分かるぐらいには、宮野はイケメンではあったが、如何にもチャラそうで俺は顔を顰めながら首を縦に振った。 別に、誰かに宮野の女関係を言ったところで俺にはメリットもデメリットも無いから言うだけ無駄だ。 「お、隼人!何処行ってたんだよ!」 「ごめんごめん、呼び出されてた。」 「え、なになに告白?」 「お前のだよ、バカ。」
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