第一章 片想い

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毎回毎回…コイツは何度同じ事を言えば分かるのだろうか。 俺が告白なんてされる訳ないのに、いつもこんな冗談を言ってくる。 「あぁ、俺?…何、ラブレター?」 「そ。…今回の子は前回の子とは全然違って、めちゃくちゃ丁寧でいい子そうだったよ。」 「そっか、…隼人がそう言うならいい子なんだろうね。ありがと、隼人。」 「でも……」 俺が渡したラブレターを、鞄に詰めながら奏多が言いかけた。 「ん?」 「…いや、でもさ、どうせならこういうの面と向かって渡して欲しいなって。だって、俺はどんな子が書いてくれたのかも分からない訳だし。こうやって、隼人伝いでどんな子なのかを把握しなきゃいけないだろ?」 …まぁ、確かに奏多の言っている事は分かる。でも、こうやって誰か伝いで無ければ自分の想いを伝えられないっていう気持ちも分かる。 その人の顔を見て、「好きだ」と伝える事がどれだけ勇気のいることか…。きっと、告白され慣れている人間にはその感覚が分からないのかもしれない。 「まぁ、そうかもだけど…、それでもその手紙をちゃんと見れば、その人の誠実さとか人柄とか…分かるんじゃない?あとは、ちゃんと会って話してみる…とか。」
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