第一章 片想い

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そんな事を呟いてしまってから、あっ…と思った。 俺…、何で恋敵に塩送ってんだよ……。これじゃあ、『このラブレターの子は良い子だから会って仲良くして、あわよくば付き合ってみれば?』って言っているようなもんだ。 「あっ…いや、別に奏多が嫌だったらそんな事しなくてもいいと思うけど…。例えばの話な。」 そう慌てて付け足したが、奏多は妙に納得したような顔で頷いていた。 「確かに、そうかもなぁ…。やっぱり隼人は人のこと見てるし、優しいよな。…ちょっと今回考えてみるわ、俺なりに。」 ニコッと爽やかな笑みを浮かべた奏多は満足そうに自分の机に戻り、近くの友人達と話し始めた。 ……またやってしまった。つい、お節介を焼いてしまった。 奏多はああやって言ったが、別に優しい訳ではない。心の中はいつもどす黒く染まっているし、奏多と仲良くしている女子にはいつも嫉妬している。 わざとあんなに近い距離で話してるのではないかとか、胸当たってないかとか、奏多と話すなとか。…ただ、言わないだけ。こんな所を見せてないだけだ。だって、幻滅されるのが分かってるから。 ましてや、親友だと思っている男からそんな事を思われていると知ったら、奏多はもう自分の友人で居てくれなくなるかもしれない…それが1番怖かった。
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