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『ごめんなさい…』
そう呟いた時、奏多が口を開いた。
『みんな、隼人を責めないでください。隼人は最後まで走ってくれた。バトンちゃんと渡してくれたんだ。』
『何だよ、俺らより足速くてアンカーに選ばれたからって調子乗ってんじゃねぇよ。』
『お人好しってか?じゃあこの状況なんとかしてみせろよ。』
心無い6年生からの罵声が奏多に向けられる中、女子からは『アンタのせいなのに何で奏多君が怒られてるのよ』というような非難の目。
…到底、耐えられるものでは無かった。
『奏多…俺が悪いし……』
そう言いかけて奏多の顔を伺った時、俺は思わず自分の目を疑った。
見た事のない闘争心を剥き出しつつも、自信に満ち溢れた笑みを浮かべた奏多がそこにはいた。
『じゃあ、俺が絶対に1位取ってみせますよ。そうしたら、隼人に謝ってください。』
『は?じゃあ、お前が1位取れなかったらどうしてくれんだ?』
『勿論、謝りますよ。ただ、みんな本気で走ってくれないと意味ないんで死ぬ気で走ってくださいね?』
『分かってるよ!俺らだって小学校最後の運動会なんだ、ちゃんと走る。』
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