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そう言って自分の持ち場に向かった6年生を見ながら、俺は奏多に声を掛けた。
『何で、あんな事言ったんだよ…。俺が悪いのに…。』
『え?』
クルッと振り返った奏多は、太陽に照らされてか…いつも以上にキラキラと輝いて見えた。
『…だって、友達があんな風に言われてたら腹立つじゃん。』
『でも…もし1位取れなかったら……』
『大丈夫、俺…絶対勝つよ。約束する。…そんで、6年生に謝ってもらおうぜ!』
何度見たか分からない、悪戯っ子のような笑顔。でも、今まで見てきた奏多の笑顔の中で1番好きな笑顔だった。
『…ありがとう、奏多。頑張って…!』
『任せとけって!!!』
奏多のところにバトンが渡るまでに、みんなが頑張ったおかげで順位は1つ上がっていたが、それでも1位との差はかなりあった。
正直、誰が見ても逆転なんて不可能な差。…けれども不思議と奏多なら大丈夫だという確信があった。
奏多が、バトンを受け取って走り出した瞬間…ワァァッと観客が湧き上がった。
奏多は、とにかく速かった。
あっという間に1人、また1人…と追い越していき、目の前にはあと1人…。
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