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周りの目がもしかしたらもしかするのでは…という、期待の眼差しに段々と変わっていくのが分かった。
応援する声が確かに大きくなっているはずなのに、俺にはその声なんて届いていなかった。
『…奏多……頑張れ、…頑張れっ!』
祈るような思いで、走る奏多だけを見ていた。
ぐんぐん縮まる1位との距離。
そして……
『1位!…なんと、白組Bチーム!!奇跡の大逆転です!!!』
盛り上がる白組。…俺は、ただひたすらに有言実行してみせた奏多を見つめていた。何だか、目頭が熱くて…溢れそうになる涙をグッと堪えた。
『隼人!』
大きく手を振る奏多。額には汗が滲み、肩も大きく揺れている。
『やったぞ!!』
そう言って満面の笑みを浮かべながら右手を上に掲げた奏多は、今でも俺のヒーローで、憧れで、恩人で…そして好きな人だ。
それからというもの、俺は約5年間の片想いを続けている。
決して、叶う事のない恋だ。
……辛くなかった、と言えば嘘になる。
中学に入ってからの奏多のモテっぷりは、小学時代よりも圧倒的だった。
ほとんど毎日呼び出されての告白。部活の大会では、奏多を見たいが為だけに沢山の女子が集まった。バレンタインには食べ切れない程のチョコを貰い、卒業には学ランのボタンが全滅した。
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