溺愛

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カイは立ち上がると、ぎゅーっと私を抱きしめて、優しいキスをした。 『愛してる。心の底から。月一往復分。ずっと』 愛の言葉を浴びせるように、呟いて、私を抱きしめる。 幸せで、泣けてきた。 涙を拭いて、顔を上げると、 『あ、指輪、して』 と思い出したように、言われる。 手のひらに受け取っていた箱には、クラッシックなデザインの、ザ・婚約指輪というタイプの指輪があった。 『サイズ、あうと良いんだけど』 そう言いながら、私の左手をとって、指輪をはめてくれた。 ちゃんとサイズ通り。 『ピッタリだよ』 すごい! 『こっそり図った!』 いつの間に。 今日だって、ずっと一緒にいたから、いつ買ったんだろう。 自分の左手に、カイが贈ってくれた指輪が光る。 おかしいほど、うれしくって、幸せで、頬が緩んだ。 『いつ用意したの? 今日、ずっと一緒にいたでしょう?』 こっそり買ってくれたというのが、嬉しくって聞いてみる。 『ちょっと前に。昨日と今日、ずっと持ってた』 困ったように、眉の端をかいた。 『え!? 旅行中に言うって決めてたの?』 私があの時、泣いたりしたから、決めたのかと思ったら、そうじゃなかったらしい。 『まぁ、そうだよね』 別れると思っていたから、あんなに泣いたのに。 『カイ。あなたがイギリスに帰るって言うから、私、すっごく取り乱して、泣いたよね?』 『あぁ。ごめん。』 誤魔化すように、頭を撫でられた。
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