2340人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
ターミナルの外に、飛行場のライトが点々と続く。
日曜の夜、深夜便で日本を発つ。
遅い時間にでて、早朝ロンドンに着く便で、「乗ったら、寝てればいい」便だと、カイが私の分もビジネスクラスを取ってくれた。
『ミュウ、大丈夫?』
空港のラウンジの端っこで窓を見ていたら、新聞を取りに行って戻ったカイが聞いてくれる。
『うん。大丈夫』
カイの手を取って、頷くと、カイが優しくこっちを見つめた。
『寂しい?』
『少し。だけど、わくわくのほうが大きい』
『なら、よかった』
人前なのを気にするように、少しだけ私の肩を抱いた。
空港のライトの上に、月が見える。
『カイ、月が出てる』
『ん。どこの国にも月は出るから、ミュウ、覚えてて。夜のたびに、思い出して。俺がどれだけ、ミュウの事を愛してるか』
『月まで、でしょ?』
『そう。月まで一往復』
「あっ」と月のほうを指さすので、そっちを見ると、その隙に、ちゅっとキスされた。
『ちょろいな、ミュウは』
くすっと笑っている。
『あなた、だから』
あなたには、簡単。
18の頃から、あなたに、抜け出せない恋に、落ちているから。
カイの手をぎゅっと握ると、おでこにキスが降って来た。
「I love you to the moon and back.」
ー完ー
最初のコメントを投稿しよう!