溺愛

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次の日から、私達は色んな人に挨拶して、するべき手続きをした。 別に隠すことないだろうと言われて、一緒に出社した。 『ジェイク、ちょっとしたら、コーヒーを淹れてきますから、スケジュールを確認しましょう』 仕事モードに切り替えて、カイのオフィスのドア前でわかれた。 自分のデスクにバックを下して、ちょうど出社してきた佐藤ちゃんにお土産を渡すと、すぐに佐藤ちゃんは私が婚約指輪をしているのを見つけた。 「うっわ!すごい!!素早い!!」 パチパチと小さく手を叩いて、目をきらめかす。 「うん。びっくりするよね」 ちょっと照れて笑った。 「でも、良い!運命。あんな大きな花束、会社に持ってくる男、そうそういませんから」とニッコリ笑った。 「話もあるし、お昼、一緒しよう」 「はい!」 花ちゃんにも声をかけよう。 コーヒーを淹れて、給湯室に皆さんへのお土産を置く。 課長にも挨拶しないといけない。 カイとスケジュール確認中に、 『ミュウ、朝のうちに課長と、人事には時間をとって、電話でもいいから挨拶して。俺もしておくから』 と言われた。 『はい』 『で、部長会議で報告する』 『え?』 『おめでたいだろ?』 『お、おめでたい、ですけど』 おめでたいのは、私たちの頭の中だけじゃないだろうか……。 『ジェイク、私たちの個人的なことは、会議ではいいんじゃないですか?』 『そう?いちいち、部長たちに個別に報告するより、手っ取り早くていいだろう?君、もうすぐ退社するんだよ』 ビジネス調子に言われてしまう。 合理的。効率的。 彼に、恥じらいとか、「私ごときが」とか「個人的な」みたいな感覚はないらしい。 驚く事に、人事部長も課長も、それほど驚かなかった。 人事部長は、私が退社するだろう事を知っていて、カイの契約終了と同時に退社する事をあっさり許可してくれた。 「ジェイクから、ちょっと前に、君の契約と辞表の時期について、確認があってね」と教えてくれた。 あの人、罠の張り方が周到。 「あぁ、よかったね。どうなることかと思ったよ」 課長にまで変な心配をされていた。 課長は、大きなお花が届いたのを知っているから、しょうがないのかもしれないけど。
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