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「……ねえ、覚えてる?」
とても懐かしい声がする。誰だっけ?
「文人、私のこと忘れちゃった?」
眩しい太陽のような明るい声。いつも俺に元気をくれた。真理……なのか?
「真理……?」
「ピンポーン!大正解!」
重い瞼を開けると、目の前は真っ白な砂浜が広がっていた。ずっとずっと向こうまで広がる青い海と、どこまでも広がる雲一つない青空。今にも鴎が鳴いている声が聴こえてきそうだ。
そして隣には、しゃがみこんで俺を覗き込む……真理がいた。真っ白なワンピース姿は、羽根があれば天使ともいえるような姿をしてる。
「ひっさしぶりだね。ふみくん」
俺のことを『ふみくん』と呼ぶのは真理だけだった。やっぱり真理なんだ。
「ふみくんに会いたくて、きちゃった」
懐かしさやら嬉しさやら色んな感情が込み上げて、何も言わずに真理を抱き締めると、セミロングの髪からふわっと広がる懐かしい匂い。
抱きしめると決まって俺の胸に頬擦りをしてくる。久しぶりの感触。
「どうして……?」
「ま、いろいろあるんだけどさ、説明するとすごーく長い話になっちゃうから」
そういって真理は俺から離れると、ウインクをした。
海風になびく黒髪、色白でとても細い手足。久しぶりに見た真理は昔と全く変わっていなかった。
「ずっと会いたかった」
「私もだよ?それよりさ、ふみくん一緒に散歩しない?」
「えっ」
「昔みたいにさ、ね?」
俺の腕の中で顔をあげて「お願いっ!」と目をつぶりながら両手を合わせた。コミカルでかわいらしい感じ、信じられないけど本当に真理なんだなと思ってしまう。
何年振りだろう。彼女との再会は。
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