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真理とは家が近所なのもあって、物心ついた頃からの仲だ。幼稚園、小学校、中学校が一緒で、互いに一番の親友だった。二人ともノリでふざけたり、はしゃいだりするのが大好きだから、ずっと一緒にいても飽きることなんて全然なかった。
「そういえば、学校の屋上でこっそり猫飼ったりもしたよな」
「あー!ポンちゃんのことだよね!ぽっちゃりさんで超かわいかったよね」
砂浜を裸足で二人でただ歩いて、尽きない思い出話に花を咲かせているだけなのに、すごく幸せに感じる。
どこまでも広がる海はすごく開放的で、息苦しい都会とは違っていい。
「ほんとに懐かしいね。ふみくんのバイクに乗っけてもらって海行って、歩きながら色んな話したよね」
「ああ、愚痴を聞いてもらったり、バカみたいな話もしたよな。俺のくだらない話に乗っかって続きを話した女は、後にも先にもお前だけだよ」
歩きながらずっと気になっているのは、足には砂のざらざらとした感触がするのにそこには砂がついていない事だった。波打ち際で海水に足をつけたりしても、冷たさを感じるのに足が濡れた感覚がない。
思えば起き上がったときも、俺の体には全く砂がついていなかった。
「やっぱり海っていいねぇ。水が冷たくて気持ちいいや」
はしゃぎながら真理は言った。足首まで浸かってる海水を軽く蹴りながら歩くから、ちゃぷんと小さな水しぶきが俺にところにはねてくる。でも、なぜか冷たさは感じるけど濡れてる感じはしない。
違和感について考えながら歩いていると、真理が俺を気にかけるような目で見ていた。
「ちょっとふみくん話きいてる?」
「お、おう。そうだな。結構歩いたけど大丈夫か?疲れていないか?」
真理の顔には少し疲れが見えていた。きっと外に出かけるのも久しぶりだから、あんまり無理をさせたらダメだ。
「ちょっと疲れてきたかも」
「じゃあ休むか。無理すると体によくないからな」
「そうだね。じゃあ、今度は浜辺の方にいって海眺めていようよ。ふみくんと会うの本っ当に久しぶりだから、私まだ話足りないよ?」
おしゃべりな真理の事だから、多分日が暮れ始めても話足りないと言っていそうだ。もちろん俺だって夜どころか朝まで話してたい。
だけど……この違和感みたいなものはなんだろう。すごく大切な事を忘れている気がする。
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