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「そんなこと言うなんて……しょうがないなぁ、ふみくんは」
やれやれと困った様子で真理で言った。抱きしめているから表情は見えないけど、嬉しそうなのは声で伝わってくる。
「ふみくん、まだこっちにきちゃダメだよ?」
「おう。待っててくれるんだよな?」
「何年でも待ってる!」
「ときどきでいいから、芝居観に来いよ。別に俺に見えてなくていいから」
「もちろん。連絡はできないし、ふみくんにも会えないけど……大丈夫そうなときは、必ず観に行くね。」
悲し気だった声が、だんだん明るい声に変わっていく。真理を離す前に、俺は優しく真理の頭と、背中を撫でた。また会えなくなってしまうけど、もう大丈夫だよ。
「……じゃあ、行くね」
ためらいながらも、真理が俺から離れて歩き始める。その背中を見守っていると、急に真理がこちらを振り向いて走ってきて、俺にキスをした。
顔が真っ赤になっている真理を、最後にもう一度だけ強く抱きしめ、彼女の匂いをしっかりと感じた。もう二度と、忘れないように。
「お別れのキスするの忘れてた!私、ずっと待ってるからね!!」
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