0人が本棚に入れています
本棚に追加
外はまだひんやりと肌寒かった。外の風にあたっていると、まだ上京したばかりの頃を思い出す。
たまに目が早く覚めた朝は、こうして一人でぼんやりと外を眺めていた。あの頃は目を閉じて深呼吸すると、瞼の裏で真理が笑っていた。
あの太陽のような、ぴっかぴかの笑顔にどれだけ支えられたのだろうか。あの笑顔があったから、今、俺はここにいる。
「本当にごめんな、真理。俺は真理の事を忘れていたのに、真理はずっと俺のことを見ててくれてたななんて……」
申し訳ない気持ちが心からあふれて、涙になりこぼれると、風が頬から涙を拭い去った。「ふみくんには涙は似合わないよ?だからほら、スマイルスマイル!」
俺が落ち込んでるときに、決まったように明るく笑って言う真理の口癖を思い出す。
ふと、雲の切れ間に太陽が見え隠れしていることに気づいた。そんな朝焼けの空に向かって、俺はできる限りの明るい笑顔を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!