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私と侑李は記憶の研究をしていた。
侑李とは大学一年の時に語学で同じクラスになった。私は侑李のサラサラと光を受けて時々金色に光る髪の毛と、たまに薄い水色みたいに見える瞳で風のようにうっすら微笑む姿がとても好きだった。そんな風に笑う時は、侑李のまわりもなんだかつられてふわっと明るくなるように感じた。
そう思いながら暗く昏い塊の中からぷかりと浮かぶ。引っ張り上げた細く輝くパルス。
『ああ、今日も徹夜、仁凪、コーヒー入れて来る。蜂蜜入れる?』
うん、コーヒー淹れて、ほしい、な。
だめだ、涙が出そう。けれどもこの過去の記憶を今と混ぜるわけにはいかない。一度上がろう。
目を開けてフルダイブ用の旧型ヘルメットを脱いで、ふぅ、と息を吐いた。
ガラスの壁で区切られた先で柔らかな台に侑李が横たわっている。うっすらとまぶたは開いているけど、その瞳はキラキラもしてないし何も映していなかった。手首と足首と胸元。それから頭に大量に生えたコードとプラグ。
併設されたミニキッチンでコーヒーを淹れた。ブラックと、蜂蜜入り。侑李、淹れてきたよ。匂いだけでも感じて。インスタントだけど侑李が好きなブラックコーヒー。
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