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『ねぇ、覚えてる? 一緒に水族館に行った時のこと。クラゲの足がたくさん青く光って綺麗だった』
覚えてる、覚えてるよ、侑李。その時に視覚的に把握できればいいんだってひらめいたんだから。だから届いて、お願い。
そのコールタールのような真っ暗闇に再びとぷんとダイブする。手を伸ばして探っても最初はうまく繋がらない。でもさっきのは去年の夏の記憶。この区画では探し物は見つからない? シナプスの繋がりが薄いか、もともとなかったか。それじゃ、他の場所、他の場所。
少し足を伸ばして、まだ歩いていない部分に潜る。ふいに浮かぶ侑李の声。
『それにしたってあんなところにお弁当置いておくことはないじゃない?』
うん、そうね。あれは私が悪かった。でも今知りたいのはそれじゃぁなくって。
足を止めてジジジという小さなパルスを発生させているシナプス情報を拾い上げてしまうと、繋がっていた他の部分は真っ黒闇に沈んだ。深く潜るとよりたくさんの光につながるけど、この重たい液体の中では上と下がわからなくなって元に戻れなくなる可能性がある。
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