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「悪いが、俺はお前に助けられるほど弱くはない」
赤い髪の男だった。ボールスを殴り続けていた男は地に伏し、その体から血を流していた。ピクリとも動かないところを見る絶命している。
「貴様!」
傭兵が向かってくるのを軽く去なし、その大太刀を叩き込む。血が花となり散っていく。鮮やかに、そして鮮明にその場所が赤く染められていく。赤い髪の男の姿は血の赤に溶け込むようで、まるで人ならざる者のように見えた。
「うぁぁぁあ! 化け物だ! あいつ人間じゃねぇ!」
赤く染まるその姿を見て、傭兵の誰かが叫んだ。それを皮切りに背を向けて逃げ出すものが出始めた。恐ろしい鬼でも見たかのように散り散りに逃げていく。
「くっ、貴様の事は覚えたぞ! その緋髪、緋眼をな! エルドラ様に逆らったと報告してやる」
捨て台詞のように逃げていく。
「お前が向かってこいよ」
呆れたように赤い髪の男が呟く。剣の血を振り落とし、鞘に納めるとボールスの方を向いた。過度な暴行で気絶している。いや、それだけでないと赤い髪の男は思い当たった。
「奴隷が逃げるッてんだ、飲まず食わずで駆けてきたに違いない……か」
疲れもあるだろう。赤い髪の男はボールスの体をその肩に担いだ。ボールスの体は軽かった。
「こんな体で、この大太刀を振り回していたとは信じられんな」
それも不思議で仕方なかった。起きてから色々聞こう。話す時間はたくさんあるはずだ。それに、こんな風にお偉いさんに逆らったのだから、もう後戻りはできないだろうと赤い髪の男は口元を少し緩めた。
「それはそれでいいかもしれんな」
赤い髪の男はボールスを担いだまま、赤く染まった地面を後にした。
………
……
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