Al13

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Al13

『なあ、覚えているか?』 6月、連日の雨、30度を超える気温。 じっとりと暑さが身体にまとわりつく季節が今年もやってきた。 雨が好きではないのにこの季節が好きなのは、紛れもなくこの女性が理由である。 「ええ、覚えていますよ。今日は10回目の結婚記念日ですね。アルミニウム婚式と言うのですよ、アルミニウムのような美しさと柔らかさを持った2人でいられるようにと。」 『そうか。』 愛らしい見た目の妻が私の手を握り、にっこりと微笑んだ。 6月は私たちが出会い、生涯をともにすると誓った記念すべき季節なのだ。 『お前が私を選んだのが未だに信じられないよ。』 「またそれを言うんですね。何度目ですか。心配せずとも私は貴方を愛しています。」 彼女は口元を手で隠し、目を細めてクスクスと笑う。 妻は聡明だが控えめで、今時珍しいくらいに奥ゆかしい。 まさに、理想の女性である。 こんな素敵な女性が私の元にいることが、未だに信じられない時がある。 しかしこうやって、当たり前に彼女が私の元で笑い過ごしているものだから、安堵と幸せを噛み締めることが出来るのだ。 『いつの日か、子どもが欲しいと言っていたろう。』 大切な妻だ。 願いは全て叶えてやりたいし、彼女には誰よりも幸せになってほしい。 そのために、出来ることはなんだってするし、それが私の使命である。 『その…、結婚記念日のプレゼントだ。』 女性に、しかも愛する人にプレゼントを渡す経験がほとんどない私は口籠もりながら、乳母車を押して彼女に渡した。
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