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「なぁ、それでどうなった!?」
「何も。 ただエリカが俺のことキモイってさ」
「なんだそれ? それだけのために呼んだのか? つーかキモイとかって面と言われてウケるなお前」
「うるさい」
まぁ嘘なんだけどキモイって思われたのは事実だし。 それより本当に黙ってるんだよな? 信じるからなエリカ、メグミ。
それから数日は平和だった、どうやらエリカもメグミも俺に言ったことをちゃんと守ってくれてる。
これなら安心かな、今日は学校帰りに行くところあるから授業が終わったらすぐに帰ろう、いつも帰っているけど。
そして電車に乗り俺は寄り道しながらいつもの薬局へと向かった。 なんせ汗っかきでメイク直ししてファンデーションと下地の減りが物凄く早いからな、最近は汗をかく量も多かったし。
それから店に着くと化粧品コーナーに。 相変わらず高いよなぁと思い今度はどのファンデーションを買おうかなと少しウキウキしている自分は女みたいだなと思い選んでいく。
あ、この化粧水と美容液欲しいな。 ううむ、パックも試してみたい。 下の列を見ながら右に移動していくと肩が誰かと当たり「あッ」という声がすぐ横で聞こえた。
「す、すみません、不注意でした」
「いえ、こっちこそすみません」
見れば俺と同じくらいの女子高生だった。 すんなりと謝って済むかと思ったのに右側から感じる視線と俺が右にやる視線が合って約5秒。
「あのー、何か?」
「あ…… ええとお化粧とかするんだなって思って。 可愛い顔立ちだから似合うだろうなって、それとこれが巷で言うオシャレ男子なのかなと」
少し見ていたのをバツが悪いと思ったその子はペコッとお辞儀をしてその場から去った。
結構可愛い子だったなぁ。 つーか化粧して歩いているだけならまだオシャレ男子の部類に入るが俺は思い切り女装してるからちょっと違うんだけどな。
沙良と出会ってしまった今ではそっちの方が良かったかなと思うけど女装して周囲の反応見てルンルン気分だった俺が何言ってんだか。
そう思って買い物を済ませて店から出ると聞き覚えがある声が聞こえた。
「へぇー、そんな可愛い男の子だったの?」
「そうそう、絶対お化粧したら可愛くなるよ」
「あれ?」
「え?」
「げェッ!!」
なんと店の外にいたのは沙良とさっきの女子高生。
まさか鈴鹿女子の子だったのか!?
「ゆ、柚月?」
「柚月?? 沙良の知り合い??」
タラリと背中に冷や汗が……
お、落ち着け俺! てかなんでこんなところで偶然会うんだ!? エリカとメグミに遭遇した時から災難続きだ。
「ね、ねぇ、ちょっと待ってくれます?」
俺は2人に背を向けて歩き出したが沙良の声が聴こえて立ち止まり先程買ったアイライナーをこっそり取り出して咄嗟に左目の目尻にホクロを作った。
寄り道してたおかげか辺りはもう薄暗い、頼むから誤魔化されてくれ!!
「何か?(出来るだけ野太い声)」
「あれ? さっきと声が」
「気のせいです」
さっき化粧品コーナーでぶつかった沙良の友達らしき人物に被せ気味で否定した。
「それよりも…… あの、ちょっと顔を」
「い、いや、なんで?」
「あ、私の友達と凄く似てて…… もしかして城内高校の生徒さんですか?」
ぐッ、それすら答えるのはマズい、けどエリカとメグミの言う設定では俺は先輩ということになってるし似てる人物をこれ以上量産しては収拾がつかなくなる……
「そう…… だけど?」
「やっぱり」
「沙良どういうこと?」
「ミカ、ちょっと待ってて」
沙良は俺のところへ来て顔を覗き込んできたので俺はその反対を向く。
「あ、あのッ!」
尚もこちらに回り込もうとする沙良はフェイントを掛けて俺の正面に立った。
「…… あれ?」
「な、なんでしょう?」
柚月は思った通り俺の描いたホクロを見て?マークが浮かんでいる顔になる。 いつぞや体育館で見られた時は距離もあったし今は薄暗いし…… どうだ!?
「気のせい…… ? だったみたいです」
「ならよか…… 誰にでもあることなので」
「それにしても本当にそっくり」
「沙良がそんなに男の子に夢中になるなんて珍しいね」
「ええと違くて…… ほら、柚月って子と仲良くなったって言ったでしょ? その柚月にそっくりで」
誤解? も解けたようだしここにこれ以上いるのはいろいろとヤバい、汗でホクロも消えそうな気もするし。
「じゃあ俺はこれで」
「待って下さい!」
「へ?」
「でも…… 本当そっくり」
「沙良、もうそれくらいで……」
俺は緊張がMAXになっていた、なので冷静ではなかった。
「柚月」
「何?」
「え?」
沙良が友達に俺の名前を言って話しているのを思わず拾っちゃいけないところから拾ってしまった、なので当然沙良の注目を浴びる。
ど、どうしよう!? なんで俺は自ら窮地に陥るんだ!!
「え、あ〜、柚月! 柚月な!」
「知ってるんですか?」
こうなりゃヤケだ。
「柚月は俺の妹なんだ」
謎の超展開、過去最大の嘘。 俺に妹なんているはずないのに……
「柚月が妹さん??」
「そう」
「…… でもエリカとメグミもそんなこと」
「俺あいつと似過ぎててあいつからはウザがられてオフィシャルでは兄弟とは思われたくないって思われてて」
オフィシャルってなんだ? 無理がありすぎるだろ!! と言ってて自分でつっこむ。 だが人がいいのか沙良は……
「そう…… なんだ、お兄さん可哀想」
し、信じた!?
「そんなことってあるのかな?」
と冷静につっこむ沙良の友達。 おい!! そりゃ普通の反応だけどさ!
「柚月兄弟いたこと話してくれなかったな…… カラオケの時も似たような話したのに。 あれってとぼけてたのかな?」
「そう思われたくないからじゃないかな?」
「ちょっと寂しいな、友達なのに」
「沙良嘘つき嫌いだもんね」
な、なに!?
沙良の友達が衝撃的な発言をした。
じゃあ俺のこと嫌いなの!? てか嫌われる予定? (…… と仮に沙良じゃないとしてもバレたら嫌われるようなことをしているのは自覚してない)
「あ、いやでも柚月は嫌いじゃないよ、でも今度会ったら聞いてみよッ!」
「そ、そうしてみたら? じゃあこれで」
「あ!! 待って下さい!」
本日2回目の「待って下さい」。 や、やめてくれ、もう俺は限界だ。
「名前、お名前なんていうんですか?」
「名前? ええとゆ……」
危ない、柚月と答えるところだった。
「カ…… ヅキ」
「カヅキさん……」
俺はもう滝汗待ったなしなのでその場を振り向かずに足早に立ち去った。
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