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「いったいどれだけ自分の首を絞めれば気が済むの?」 「焦ったのはわかるけどもうちょっとマシなこと言えなかった?」 「もう後戻り出来ない」 あの後帰って考えてみたがどう考えてもバッドエンドにしかなりそうにない今後起こるであろう結末に何も打開策が思い浮かぶことはなく出来るだけ関わりたくないエリカとメグミに仕方なく相談をした。 「柚月の場合もう最初から詰んでるってわからない? あ、カヅキだっけ」 メグミが冷たくそう言った、もう呆れ果てているんだろう。 「大体嘘に無理があり過ぎるんだってば。 てかなんでそんな大嘘通用したのかなってそっちのが不思議」 「ほら恋は盲目みたいな感じで沙良って自分を助けてくれた柚月にかなりゾッコンだから、女友達としてだけど。 エリカがこんなどうしようもない柚月の話に乗ってあげてるみたいな」 「ちょ、ちょっとぉー! メグミは余計な一言を直しなさいよ!!」 余計なことに話をそらさないでほしいな。 俺はぶっちゃけまったく余裕がないから愛想笑いすることも出来ないぞ。 「こっちは真剣に悩んでんだよ!」 「いやいや柚月立場わかってる? こっちは黙ってあげてて尚且つそのバカみたいな悩みの相談乗ってあげてんだからね」 「うぐ…… すみません」 「まぁまぁメグミ、柚月もこうして反省してるんだからさ」 「はいはい、惚れた女の子の弱み」 「だからぁーッ!!」 「もう、話が進まないじゃない。 とりあえずその嘘に信用を持たせて…… いや持たせるべきなのかなぁ? ぶっちゃけ信用を得れば得るほど柚月が男ってバレた時のヘイトがとんでもないことになりそうだけど。 聞くに沙良って嘘つき嫌いみたいだし。 終わってんじゃない?」 そうなんだ、沙良に嘘だとバレたら終わりだ、それは嫌だ。 自分で最低だってわかってるけど沙良に嫌われるのはもっと嫌だ。 なら傷が浅い段階でネタバレすればいいんだろうけどそれこそ沙良との関係が終わってしまう、袋小路だ。 「今更私が言うのもなんだけどそれにうちらが加担したらうちらも沙良を更に騙すことになっちゃうしどんだけ最低なことに巻き込むのよ?」 「返す言葉もない……」 「でもさメグミ、私らも首突っ込んだわけじゃん? その場で柚月は本当は男ですって言えば良かったのにさ。 その私らが一方的に柚月を突き放すのはなんか筋が通らないっていうか」 「まぁそれもそうなんだけどねぇ。 ただ柚月の言ったことがあまりにもバカ過ぎてフォローしたくてもどこからか煙が立ちそうなのよ」 「でも逆に言うと沙良はそんな柚月の嘘を真に受けてるってわけでしょ? 上手くいけば柚月と沙良が付き合うのは無理でも沙良が傷付かないところで柚月が退散して自然消滅って手も使えるんじゃない?」 なんだと!? 「ちょっと待てよ! それじゃあ沙良と俺はどうなるんだよ!?」 「高望みはしないことね、第一男の柚月を気に掛けてるのは女の子の柚月に似てるからでしょ? 確かに柚月はそのままでも可愛いんだけど女の子の柚月に似てなかったら沙良は歯牙にも掛けないんじゃない? よくてエリカ止まりよ」 「うッ……」 「言い方!! 私止まりって何!?」 「あははッ、言葉の綾。 ごめんごめん、でもエリカの言うことにも一理あるわよね。 沙良とは自然消滅、これが一番平和な解決の仕方じゃないかな? 言っちゃ悪いけど他校の生徒なんだしね」 俺は沙良のことが好きなのに沙良とは自然消滅って。 それじゃあ俺の沙良への気持ちはどうなるんだ? 諦めるんだったらこんなに必死になってないのに。 「あの…… 質問」 俺の望まぬ方向へと舵を切り出しちまった。 なんとか他に良い手がないものか。 「はいどうぞ」 「ここから大逆転って名案はないか?」 「「ない」」 即答…… 「どうしてそう都合良く行くと思うのかなぁ? 柚月って凄くポジティブなのね」 メグミはまだそんなこと出来ると思ってんの? と冷ややかに返す。 「そうだよ柚月考え甘すぎ。 最終的に嫌われちゃったとしてもさ、別に沙良じゃなくても誰か1人くらいはしょうもない柚月でも好きになってくれる人がいるかもしれないしそんなに重く考えなくても大丈夫だよ」 「エリカ…… あんたも大概だけどね」 一向に解決策は自然消滅しか出てこない中、昼休みは終わり授業も終わり家に帰った。 最近はやることなすこと全て裏目に出ている、明日は休みだし沙良から誘いがあっても断ろうかと思っていた。 「あ、柚月こっちだよー!」 「お待たせ」 会ってしまう俺の意志の弱さ。 でも実際あの後の沙良のことが気になってたし仕方ない。 「じゃあ行こっか」 「あ、うん」 あれ? いつも通りかな?? それならそれに越したことはないんだけど。  沙良のショッピングに付き合いお昼になったので近くにあったファミレスに寄った。 席に座って何か頼むのかな? と思ったが沙良はメニューを開かない。 「どうしたの、お腹空いてないの?」 「あ…… ううん、そうじゃないけど。 あのさ」 歯切れの悪い沙良。 ああ、ここで来るか。 「柚月って私に隠してたことあるよね?」 「ええ?」 「……」 とぼけてみると沙良はプイッとそっぽを向いた、怒ってるかも…… いや、怒ってる。 隠してることって俺が男ってこと? それともそっくりさんのこと? どっちもバレてるなんてパターンはないよな、だったら会ってもくれなそうだし。 「それは…… 私にそっくりな先輩がいたってことのこと?」 「他にあるの?」 俺は首をブンブンと振った。 危ない危ない、余計な疑念を抱かせるところだった。 「えっとね、嘘ついててごめん。 私の兄貴なんだあれ」 「そっか、やっぱりそっか!」 「小さい頃から双子でもないのによく似てて揶揄われててそれが嫌で兄貴のことも嫌いになっちゃってこのとおりなの。 私の友達もそのこと知ってるから私に合わせてそう言ってくれたの」 よくもまぁデタラメが出てきた。 それにエリカとメグミなんてクラスメイトなだけなのに友達認定してるし。 「そうだったんだ、でも本当そっくりだよね! あ、それでね、私この前買い物してたら偶然柚月のお兄さんに会ってびっくりしちゃった」 「へ、へぇ〜…… 兄貴どうだった?」 「可愛かった! じゃなくて凄く優しそうな人だったよ。 ああ! でも私しつこかったからウザがられてなかったかなぁ? お兄さん何か言ってた?」 「ううん、初耳だし。 それより兄貴と会ってたんだ」 「あれ? でもさ、ミカって友達とその時一緒にいたんだけどさ、柚月のお兄さん化粧品選んでたんだって」 そ、それだーーッ!! 何か見落としてたとおもったら男の俺が化粧品買ってたらなんか引っかかるじゃん! 「そ、それはね、うちの兄貴彼女がいてさ、化粧品たまに買わされてるみたいで」 上手い俺!! …… いや、上手くないぞ! なんで彼女持ちにしちまったんだ!? でもそうじゃないと言い訳が。 待てよ、母さんのってことにしとけばよかったか? くそッ!! 嘘が嘘を呼んでまた自分の首を絞めてしまっている。 「あー、彼女さんの。 なんか大変だね柚月のお兄さんも」 こうなったら…… 沙良が俺のことをどう思ってるのか聞いてやろう! 「もしかして、兄貴のことちょっと気になってた?」 「ほえ? ああ、柚月が男の子だったら私からお付き合いしたいなぁって言ったことあるじゃん。 でも彼女さんがもういるんだったら私お邪魔虫だし、それよりもし柚月のお兄さんと私が付き合ったら柚月は嫌だろうしね」 それは、それはつまり付き合えたって解釈でいいのか!? じゃあ何か? 俺のやってることは全部無駄で男として沙良に会ってた方が。 だが今の柚月で沙良を助けなかったら俺なんて印象に残らなかったろうし。 俺が心の中で意気消沈していると沙良は言った。 「でもね、柚月といると楽しいからそういうのはまだいいんだ」 一光年離れた気がした。
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