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しばらくした後、手の中の贈り物が消えました。それに気づいて顔をあげると、アルファ様が贈り物を手にとり、見つめていました。あ、笑ってらっしゃるわ。
「ありがとう……開けてもいいかな」
「はい! どうぞ!」
包装紙が丁寧に開かれていきます。プレゼントの中身はハンカチでした。目を見開き、じっとハンカチを見つめるアルファ様にあたふたと説明します。
「あのっ……普段、使えるものがいいかと思って、ハンカチを選びました」
「…………」
「ハンカチに四つ葉のクローバーの刺繍があるのですが、アルファ様に幸運がくるようにと思いまして……そのっ……」
「…………」
「本当は自分で刺繍をしたかったのですが、私、お裁縫は不得意でして……買ったものですみません……」
緊張しすぎて、余計なことまでべらべらと話してしまいました! ひかれてないでしょうか。ちょっと泣きそうになりながら、待っていると。
「ありがとう。大切にする」
アルファ様が微笑まれました。
うわっ……うわー……
こんな優しい顔をされるのね……
アルファ様はハンカチを箱にしまわれました。私は胸がいっぱいで、口元をゆるませました。
「……そろそろ戻りましょうか」
お店で待っている二人を思いだし、ベンチから腰を持ち上げようとしました。
しかし、私の腰はすとんと、ベンチに戻ってしまいました。それは、アルファ様が私の腕をとって、引き寄せてしまわれたから。一人分あった距離はつめられしまっています。目と鼻の先に、アルファ様の真剣な眼差しがありました。
「アルファ……様……?」
「次に会うとき、私と婚約式をしてほしい」
え?
「神に、君と婚約したことを誓いたい」
ええええええ!?
思いがけない言葉に、私の頭は真っ白になりました。
婚約式!?
そんな、そんな……!どうしよう!
神の前で、身代わりなんてできません!
婚約式は教会で行うもの。身内は全員呼び、神の前で婚約すると誓うのです。
お、おおおお、落ち着くのよ! ミランダ!
と、ととと、とにかく、ロンダに相談しなくちゃ!
私はアルファ様の手を振り払います。
「か、家族と相談してまいります!」
そして、アルファ様から逃げ出してしまいました。
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