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「私がロンダ。あなたとお会いし、手紙のやりとりをしていたのは、妹のミランダです」
唖然と聞いているアルファ様に、立て続けに言う。
「私は婚約などしたくありませんでした。それは夢があったからです」
アルファ様に火をはく竜を探しに行く夢があることを告げた。
「だから、私はミランダに身代わりをするように仕向けたのです。でも!」
ぐっと力を込めて言う。
「ミランダは悪くありません。あなたとお会いする日に、わざと寝込んでいるフリをしました。手紙を書かせるようにしたのも全て私がいいました。全ては私のせいなんです!」
私は頭を下げる。
「ミランダに嘘をつかせたのは、この私です。お母様も私の思惑を知りませんでした。ですので、全ては私が悪いのです。どうか、どうか罰するなら私一人でお願いします。私一人にしてくださるなら、どんなお咎めも受けます」
必死だった。
でも、私にはこれしかできないから。
処罰によっては夢も諦めようと思っていた。
今は夢より家族が大事だから。
だからどうか、どうか。
長い沈黙の後、アルファ様が近づいてくる。
「失礼」
「え、」
ゆっくりと手を伸ばすと、首にかかった後ろ髪をはらった。
行動の意味が分からず、アルファ様を見上げる。
「君にはないんだな」
「え?」
「私が思いを寄せる女性には、ここにホクロがあったはずだ」
その言葉に驚いた。アルファ様の言うとおり、私達は瓜二つだけど、一つだけ違うところがある。
それは、首にあるホクロ。ミランダにはあって、私にはないもの。アルファ様は気づいたのね。
「ミランダ……というのだな。本当の名前は……」
アルファ様が愛しそうに妹の名を呼ぶ。それだけで、込み上げてくるものがあった。
「君を罰することはしない」
「しかし、私は……」
「君のおかげで、私はミランダに会うことができた。感謝こそすれ、罰するなんてとんでもない」
アルファ様が少し微笑まれる。
「彼女に出会わせてくれて、ありがとう」
その言葉に涙がこぼれた。私はバカなことをしたけど、一つだけやってよかったことがある。
それは、アルファ様とミランダを出会わせたこと。
それだけは、やってよかったと心から思う。
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