出会い編 私は二人の幸せを願う side ロンダ

10/11
前へ
/40ページ
次へ
「私がロンダ。あなたとお会いし、手紙のやりとりをしていたのは、妹のミランダです」  唖然と聞いているアルファ様に、立て続けに言う。 「私は婚約などしたくありませんでした。それは夢があったからです」  アルファ様に火をはく竜を探しに行く夢があることを告げた。 「だから、私はミランダに身代わりをするように仕向けたのです。でも!」  ぐっと力を込めて言う。 「ミランダは悪くありません。あなたとお会いする日に、わざと寝込んでいるフリをしました。手紙を書かせるようにしたのも全て私がいいました。全ては私のせいなんです!」  私は頭を下げる。 「ミランダに嘘をつかせたのは、この私です。お母様も私の思惑を知りませんでした。ですので、全ては私が悪いのです。どうか、どうか罰するなら私一人でお願いします。私一人にしてくださるなら、どんなお咎めも受けます」  必死だった。  でも、私にはこれしかできないから。  処罰によっては夢も諦めようと思っていた。  今は夢より家族が大事だから。  だからどうか、どうか。  長い沈黙の後、アルファ様が近づいてくる。 「失礼」 「え、」  ゆっくりと手を伸ばすと、首にかかった後ろ髪をはらった。  行動の意味が分からず、アルファ様を見上げる。 「君にはないんだな」 「え?」 「私が思いを寄せる女性には、ここにホクロがあったはずだ」  その言葉に驚いた。アルファ様の言うとおり、私達は瓜二つだけど、一つだけ違うところがある。  それは、首にあるホクロ。ミランダにはあって、私にはないもの。アルファ様は気づいたのね。 「ミランダ……というのだな。本当の名前は……」  アルファ様が愛しそうに妹の名を呼ぶ。それだけで、込み上げてくるものがあった。 「君を罰することはしない」 「しかし、私は……」 「君のおかげで、私はミランダに会うことができた。感謝こそすれ、罰するなんてとんでもない」  アルファ様が少し微笑まれる。 「彼女に出会わせてくれて、ありがとう」  その言葉に涙がこぼれた。私はバカなことをしたけど、一つだけやってよかったことがある。  それは、アルファ様とミランダを出会わせたこと。  それだけは、やってよかったと心から思う。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加