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「もったいないお言葉です。私の方こそ、妹の相手がアルファ様で、本当によかったと思ってます。あの子、体が弱いことで、結婚を諦めていましたから…」
「そう……なのか。今もミランダは」
「私が色々とやらかしたものですから、心労を重ねて、今も寝込んでいます」
「そうか……」
「あの……アルファ様。ミランダが病弱なこと……その……二人が結ばれるにあたり、障害になるのでしょうか?」
お母様が一番懸念していたことだ。ミランダがいくらアルファ様を好きでも、たとえ、アルファ様も同じようにミランダが好きでも、病弱なミランダに辺境伯爵夫人が務まるのか。私もそれは心配だった。
「問題はない。私が辺境伯爵を継ぐとなっても、彼女の体を考慮してなるべく、屋敷ですごしてもらうようにする」
アルファ様は真摯な眼差しをむけてくれた。
「私はミランダがいい。ミランダと添い遂げたい。そのための努力は惜しまない」
力強い言葉に、安堵のため息が出た。
「よかった……ほんとうに、よかった……」
呟いた後、私はアルファ様に手紙を差し出した。
「これを辺境伯爵様に」
「父上に?」
「ことの詳細が書いてあります。本当はお会いしてお詫びしたいのですけど、お忙しい方だと聞いたので」
「両親には私から言う。なにも君一人が悪者になる必要はない」
「いいえ。嘘をついたことには変わりはありません。私、二人のこれからに、しこりを残したくないんです」
アルファ様は大きく息を吐き出した。
「わかった。預かる」
ほっとする。
「だが、覚えてほしい。父上や母上が何を言おうと、私の気持ちは変わらない」
それに微笑んで、私はお礼を言って頭を下げた。
アルファ様はああ言ってくださったけど、辺境伯爵夫妻が同じ考えとは限らない。侮辱されたと思うかもしれない。ミランダとの婚約を嫌がるかもしれない。それだけは嫌だった。
だから、願いを込めて真摯に手紙を綴った。
どうか、どうか、二人がうまくいきますように。
アルファ様とミランダが初めて出会ったときみたいに、私はベッドの中で必死に祈った。
ただ、祈った。
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