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出会い編 はい。喜んで。
ロンダの思いを聞いた私は、我を忘れて、泣きながら怒ってしまいました。だって、いくら私の為とはいえ、ロンダが黙っていなくなるなんて、許せなかったのです。大声を出して、わんわん泣いて、そのまま倒れてしまいました。
自分の体力のなさが恨めしいです。
朦朧とする意識のなか、私はロンダが消えませんように、と願い続けました。
「んっ……」
目を開くと、花のいい香りがしました。香りにつられて目をむけると、オレンジ色の鮮やかな花が見えます。
瑞々しい花びら。摘みたての香りがして、瞬きを何度もしました。
これは、カーネーション?
あれ? カーネーションの花は一輪ずつ押し花にしたはずなのに、どうして……
──がばっ
あることに思い当たって、体を起こします。久しぶりに起きたのでくらりと目眩がしました。頭を軽くふるい、カーネーションをじっと見ます。花瓶の横には、手紙があって、封蝋の家紋に目を見張りました。
これ、アルファ様の……
急いで封を開け手紙を見ると、休みに来ると書いてありました。
ドクン、ドクン……
心臓が早鐘を打ち、手が震えてしまいます。
アルファ様が来ている……?
ロンダは……?
どうなったの……?
私は身を起こして、着替えもしないまま、部屋から飛び出しました。
*
部屋を出ると、お母様とロンダがいました。私の姿を見ると、驚いて二人が近づいてきます。
「ミランダ! 大丈夫なの?!」
よかった。
ロンダがいた。
ほっとしてしまい、足元がふらつきましたが、なんとか両足を踏ん張ります。
「大丈夫……ロンダこそ……居てよかった……」
「心配かけて、ごめんなさい……」
ロンダがぎゅっと抱きしめてくれました。
ますます安心して、私も抱きかえします。
「ミランダ。アルファ様がいらっしゃっていたわ……」
ロンダの声に肩が跳ねました。ロンダはゆっくり私から離れます。
「アルファ様に全部話したわ。身代わりのことも何もかも」
心臓が鷲掴みされたかのように苦しくなります。
知られてしまった……
アルファ様はきっと、軽蔑なさったわよね……
だって、私はずっとあの方に嘘をついていたんだもの。
「ミランダ、大丈夫。大丈夫よ」
震えだした背中をロンダがさすってくれます。
「アルファ様は許してくださったわ」
「えっ……」
「許してくださった上で、ミランダを婚約者にしたいって言ってくれたわ」
その言葉に、一筋の涙が流れました。
信じられなくて、でも嬉しくて。
言葉にならない思いが込み上げけてきました。
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