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「あとは辺境伯爵夫妻のご判断を待つだけだけど、アルファ様はご夫妻がなんと言おうと、気持ちは変わらないって言っていたわ。大丈夫。きっと、うまくいく」
「ロンダ……」
「私の勝手な行動があなたを傷つけた。いくら謝っても、謝りきれない。ごめんなさい……」
「そんな! ロンダは悪くない。私だって、身代わりだと知りながら、アルファ様に嘘をつき続けた。違うって、いつだって言えたはずなのに……」
それをしなかった。
いいえ、したくなかった。
だって、私は……
「アルファ様に会えなくなるのが嫌だった。また会いたくて、私は嘘をつき続けたの!」
彼のまっすぐな瞳が見たくて。
あの照れたようなしぐさが見たくて。
優しい微笑みが見たくて。
声が聞きたくて。
本当の婚約者じゃないくせに、私は嘘をつき続けた。
ロンダの幸せとか、尤もな言い訳を自分の中に作って、私はこの状況に甘んじていた。私は浅ましいわ。
「アルファ様が、好きなのね」
ロンダの言葉に、こくりとうなずきます。
あの高い背が好き。
低くつぶやかれる声が好き。
まっすぐ見つめる瞳が好き。
私を思いやる優しい心が好き。
いつから? たぶん、出会った瞬間から。
私はアルファ様に恋をしていたの。
「アルファ様が好き。すごく好き」
止まらない涙と共に私の思いも流れて落ちていくようでした。
ロンダが抱きしめてくれる。お母様も肩を抱いてくれる。
二人に慰められて、心の曇りが晴れていきます。
そっか、私、ずっと言いたかったのね。
アルファ様が好きだって、言いたかったんだわ。
数日後、私たちの元に伯爵夫人から家への招待状がきました。
婚約の話をするために、私とロンダ、お母様の三人で、辺境の地へと行くことになりました。
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