出会い編 はい。喜んで。

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 辺境伯爵家は、古城でした。  敷地は広く、見渡すかぎり緑の平原が広がっていて、とても静かです。  扉を開いてすぐの玄関ホールも広く、かつては兵士たちの診療所として使われていたそうです。  古いながらも掃除が行き渡っていて、そこに住む人たちの丁寧な暮らしぶりが伺えました。  アルファ様が生まれ暮らしている場所。  私は観光地でも来たみたいにほうと息を吐いてしまいました。  執事の方に案内されて、ひときわ大きなサロンスペースに通さました。出迎えてくれたのは辺境伯爵夫人です。アルファ様はいませんでした。初めて会ったときと同じく、穏やかな笑みを浮かべていました。 「遠いところをようこそいらっしゃいました」 「お招き頂きありがとうございます」  お母様が一歩前に出て、深く頭を下げます。私とロンダもそろって、頭をさげます。お母様は頭を下げたまま、話だしました。 「この度は誠に申し訳ありませんでした。婚約破棄をされても何もいえない身ですのに、このように話す機会を与えてくださり感謝しております」 「まぁまぁ、そんな堅苦しくなさらないで、カリム男爵夫人。さぁ、座ってください」  私たちは夫人に促されるままソファに腰かけました。夫人が目で合図を送ると、執事の方がお茶を運んできてくれました。 「さぁ、お茶をどうぞ。私の大好きなミルクティですのよ。温かいうちに召し上がって」  ちらりとお母様を見るとうなずかれました。私はティーカップを持ちました。カップを持ち上げただけで、茶葉の豊かな香りがただよいました。香りに誘われるがままお茶を口に含むと、砂糖の甘味と、茶葉のほろ苦さが絶妙にまじりあって口に広がります。 「「おいしいです」」  一言呟くと、ロンダと私の声が重なりました。 「まっ、ふふ。さすが双子だわ。息がぴったり」  私は気恥ずかしくなってしまって、首をすくめて、いそいそとカップをソーサに置きました。夫人はくすくす笑いながら、私たちを交互に見ました。 「どちらがロンダ様かしら?」 「私です」 「そう、あなたが。お手紙、読ませて頂きましたよ」  その言葉に、緊張感が走ります。 「とても誠意のある言葉で綴られていました。そして、とても妹さんとアルファのことを案じているのが分かりました」  穏やかな声が続きます。 「手紙を見て、アルファ自身に尋ねた結果、私たちは、ロンダ様とアルファの婚約解消することに決めました。そして、ミランダ様とアルファの婚約を申し込みたいと思っています。いかがでしょうか?」  夫人の言葉に涙がこぼれました。ロンダもお母様も目頭が熱くなってます。
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