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出会い編 私が手紙を書くの?
夕食が終わった後、アルファ様とお話をしたことをロンダに伝えるために、彼女の部屋に行きました。部屋の扉をそっと開いて中を見ると、ロンダはベッドから体を起こしていました。彼女と目が合い、私は部屋の中に入ります。
「ロンダ、具合はどう?」
「だいぶいいわよ」
「よかった……」
「ねぇ、アールズバーク辺境伯爵のご子息はどんな方だった?」
にこにこ顔で尋ねられ、私は目をしばたたかせました。アルファ様のことを思い出して、ありのままを彼女に話しました。
「素敵な方だったわ。背がものすごーく高くてね。火をはく竜を倒しそうなくらい、がっしりとた体をしているのよ」
「へぇ~」
「性格はそうね。……無口な方だけど、優しい方よ。私が足を滑らせた時に、助けてくださったわ!」
「ほうほう」
「自分は口下手だから、女性を喜ばせるようなことは言えないけど、また会ってほしいって」
「なるほどね~」
「ロンダも素敵な方と思うわよ!」
アルファ様のことを話していると、しくしく胸が痛みましたので、私はわざと大きな声で言いました。ロンダはにやりと笑いました。
「そう。素敵な方ならよかったわ。次に会えるのはいつかしらね」
「さぁ……忙しいかたみたいだから、当分、先じゃないかしら」
「それではダメ!」
急にロンダが大声をだしたので、びっくりしました。
「せっかくいい感じなのに、間が開いてしまったら熱が冷めてしまうわ!」
え? 熱??
「なにか……いい方法はないかしら……そうね」
ロンダもアルファ様に早くお会いしたいのかしら。腕を組んで考え込んだ彼女を見ていると、不意にロンダがパチンと両手を叩きました。
「そうだ! 手紙よ!」
「手紙?」
「手紙なら会えなくても、お話できるじゃない! そうと決まれば、さっそく。ミランダ、手紙を書くのよ!」
「え? 私が?……ロンダが書いたほうがいいんじゃない?」
私は婚約者ではないのだし。
そう言うと、ロンダは額に手をあてました。
「あ~! 熱が出てきたわ……」
「え!? 大丈夫?」
「だ……だめだわ……ミランダ……手紙を……私の代わりに手紙を……!」
苦しげにすがりつくロンダをふりほどけなくて、私は何度も、頷きました。
「わ、わかったわ。ロンダはゆっくり寝てて。寝ててね」
ロンダを寝かしつけて、自分の中の部屋に戻りました。机に向かい、引き出しから便箋を取り出して、内容を考えます。
何を書こうかしら?
そうね。まずは、今日のお礼かしら。
手紙を書くなんて、いつぶりでしょう。
久しぶりだから、手が震えてしまいます。
アルファ様に届けるものだと思ったら、だんだん顔が熱くなっていきました。
お、落ち着くのよ。
深呼吸しましょう。
すー……ふぅぅぅぅ……
よし、書くわ。書くわよ。
私は羽ペンを握りしめます。
書くわよっ……!
わっ、文字が震えて汚くなったわ。
ち、違う便箋を!
かたん。
きゃああ! インク壺が倒れた!
もう、私ったら、どうしてこんなにドンクサイのかしら……もお。もおっ!
自分のとろくささに泣けてきます。
何度か書き直して、書き終わった頃には深夜をすぎていました。一枚の手紙を書くのに、ものすごく時間がかかりました。
「書けたわ……後でロンダにも見てもらわないと……」
書き終えた手紙を見つめます。これを見たアルファ様はどう思うかしら? お返事をくださるかしら? 変な子と、思わないかしら……
ドキドキし過ぎて眠れない。
いけないわ。ちゃんと眠らないと。私まで熱を出してしまいます。
手紙を引き出しにしまって、少しふらつきながら、ベッドに身を投げました。顔が熱い。微熱がでてきたみたい。早く眠らないと。
まどろみながら脳内に浮かんだのは、アルファ様の微笑みでした。
『アルファ様へ
ロンダ・カリムです。
この間はお会いできて、とても嬉しかったです。
あの日、二人でみた夕日は本当にキレイでした。私、オレンジ色が一番好きなのです。好きな色をアルファ様と見れて、嬉しかったです。
私達は出会ったばかりです。だから、これから少しずつ、少しずつお互いのことを知っていけたらと思っております。
またお会いできる日まで、お体にどうか気をつけてくださいませ。
ロンダ・カリムより』
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