Together

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「ねぇ、覚えてる? 一五年前の九月二八日、何をしてたか」  挨拶を済ませてすぐ、高見ヒカリは聞いてきた。パソコンの画面は、黄緑色でコーディネートされた部屋を映し出し、杉並コウキの関心を強く引く。 「当たり前だろ。日本橋にあるポケセンにまで、四人で行ったじゃねぇか」 「そうそう。あのときのポケセン、平日だっていうのにすっごい混んでたよね。待機列が信号の向こうまで伸びてて。二時間も待っちゃった。おかげでアニメが始まるのに、間に合わなかったよ」 「四人でアドバンス持っていって、通信ケーブルつなげて、マルチバトルで時間潰したりしたよな。ジュンが全然勝てなくて、キレてた」 「そうそう。ジュン、大雑把なところあるから、だいもんじとかふぶきとか、いりょくは高いけどめいちゅうが低い技ばっか使いたがるんだもん。全然当たらなくて、おかしかったよね」  ヒカリははにかみ、缶ビールを飲み進めている。もう顔が赤くなっていて、コウキも釣られて笑った。一五年前には見ることができなかった光景だ。 「ジュンとスズ、始まったのになかなか来ないね。何してんのかな。コウキ、ジュンと大学一緒だったんでしょ。何か知らない?」  閉めきったはずの窓から、冷たい風が吹き込む気がして、コウキは咳き込んでしまう。 「いや、知らない。あいつと、就職と同時に名古屋の方に行っちまったから。運よく連絡は取れたけど、今は何してんのか見当もつかねぇわ」 「もしかしたら、まだ働いてんのかな。だとしたら、とんだブラック企業だよね」  アルコールが入っているからか、ヒカリはずっと上機嫌だ。  今は二三時を少し回ったくらい。夜勤でもない限り、この時間まで働くというのは、あまり考えづらい。
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